二十年目の初恋
雨の日に 1
夏の朝……。カーテンの向こうは雨が降っていた。目覚めると悠介はもう起きていて
「おはよう、優華」
おでこにキスされた。
「悠介、おはよう」
そっと悠介の唇にキスした。すると悠介からのキスが二度、三度……。だんだん深くなるキスに悠介の唇に指を当てた。
「悠介、私もう起きないと」
「まだ早いよ」
指を舐められた。
「朝ご飯、作らなきゃ。和食だから時間かかる」
「いいよ。トーストで。だったら時間あるだろう ? 我慢出来ない。優華のせいだよ……」
胸まで掛けていた綿毛布が剥ぎ取られ、昨夜愛されたままの裸の胸が晒されて悠介の大きな手で優しく包まれた。胸の先を口に含んで意外なほど繊細な指が動く。
「ん……」
思わず出した声に悠介が
「優華。もっと感じて、我慢しないで」
私は悠介の声に体中が甘く反応して止められなくなっていった。昨夜だって、あんなに……なのに……そのままこれ以上ない悦びを与え合った。
私は甘い痺れが残る体を動かせずにいた。悠介は
「コーヒー、俺が入れるよ」
とキッチンに向かった。男の人の体には余韻というものはないのだろうか ?
「優華、トーストも焼けたよ」
「えっ ?」
急いでカットソーのワンピを着てキッチンに行くと
「奥様、どうぞ」
とカウンターの椅子を引いてくれた。
「ありがとう。私の出番は今朝はなし ?」
「出番はあったよ。さっき愛し合っただろう ? 優華の寝顔見てると綺麗で可愛くて、どうしても抱きたくなる。俺のせいで疲れただろう ? だからたまには俺が作るよ」
「でも私、きょうから専業主婦なのに……」
「優華の作る晩ご飯を楽しみに急いで帰って来るよ」
「楽しみなのは晩ご飯だけ ?」
「今夜も抱いてやるから」
「ばか……」
真顔で言われると恥ずかしさに身が竦む。悠介はマグカップのコーヒーを飲み干すと私の頭をクシャクシャッと撫でて洗面台へと消えた。私はキッチンのカウンターで一人で朝食の続き。