二十年目の初恋
雨の日に 2
平日の朝、こんなにのんびり。だって専業主婦になるって決めたんだから。明日は、ちゃんと日本の朝ご飯を作るから……。
悠介が髭を剃って出て来た。忙しく着替えに今度は寝室に消えた。
スーツ姿の悠介って、やっぱり好き。悠介は私のどんな姿が好きなんだろう ? 今度聞いてみよう。
着替えて出て来た悠介は、すっかりビジネスマン。
「優華、行ってくるよ」
って今度は玄関に消えた。と思ったら
「忘れ物」
って私の頬にキスして笑顔の悠介は今度こそ玄関のドアの向こうに消えた。
「さてと」
キッチンを片付けて。きょうは雨。悠介、傘、持って行った ? そういえば車に傘、乗せてたっけ。
お洗濯をして浴室に掛けて、お風呂で乾燥。掃除機を掛けて、やっと十時を過ぎた。副学長に電話を入れてみよう。携帯の呼び出し音五回で副学長の声。
「はい。おはよう」
「おはようございます。お会いしたいんですが、お時間作っていただけますか ?」
「そうね。きょうの午後からなら空いてるけど」
「はい。大丈夫です」
「じゃあ、お昼一緒に食べましょう。この前のお店、場所分かるかしら ?」
「はい。分かります」
「じゃあ、一時に待ってるから」
「はい。では一時に伺います」
「ええ。じゃあ後でね」
「はい。では失礼いたします」
それからメイクをして着替えてバッグは仕事用ではなく、いつもより小さめの物を選んだ。
遅れないように早めにマンションを出て十五分前には着いたのに、副学長はもうお店で待っていてくれた。
「すみません。 お待たせして」
「私もたった今、来たばかりよ。奥の個室、頼んであるから」
落ち着いた雰囲気の和室に入って
「お任せで頼んじゃったけど良かったかしら ?」
「はい」
「う~ん ? 何か雰囲気が変わったわね」
「そうですか ? 洋服のせいじゃないですか ?」