二十年目の初恋
ずっと 2
ウエストまでしか掛かっていない綿毛布を引き上げて仰向けに向き直って胸まで隠した。まだ火照ったまま……。悠介に愛されたこの体が愛おしくて、このまま眠ってしまいそう。するとキッチンから悠介の声。
「優華、もう一つ食べてもいい?」
「いいわよ。好きなの食べて」
私は思わず笑ってしまった。やっぱり悠介は可愛い。しばらくして着替えに戻って来た。スーツに着替えてベッドの隅に腰掛けて
「優華、行って来るよ」
私の唇にキスして髪を撫でて……。
「そういえば、あのパン美味しかったよ」
「どっち?」
「ミルクのクリームのフランスパン」
「じゃあ、また買って来るね。いってらっしゃい。気を付けてね」
「優華も、いい子にしてろよ」
「なに? その子供扱い」
「子供扱いなんてしてないよ。こんないい女に。俺が会社へ行ってる間に浮気するなよ」
「私が? 誰と?」
悠介、何言ってるの?
悠介は笑って
「いってきます」
と出かけて行った。玄関のドアが閉まって鍵を掛ける音が聞こえた。
まだ体に残る気だるさに目を閉じていたら、そのまま眠ってしまった。時間にすれば、ほんの十分くらいかしら。女として幸せを感じる時間……。
「さあ、起きよう」
ひとり言。でも寂しくはない。悠介に愛されて大切にされて、私の毎日はとても満たされているから。
キッチンに行くと……。悠介が入れてくれたコーヒーが温かいままで。一つ残ったカシスのジャムのデニッシュが私の朝食。