二十年目の初恋
お盆休み 1
七月が終わって夏真っ盛りの八月になって数日が経った頃……。明日から悠介の会社はお盆休み。
「ただいま。明日から休みだ……」
「おかえりなさい。お疲れさま」
「きょうは何?」
「えっとね。ジャージャー麺風の肉味噌冷麦」
「この前ブログで紹介してコメントいっぱい貰ったの?」
「うん」
「すぐ食べる。着替えてくるから」
「分かった」
二人で並んで食べる。
「やっぱり美味い。夏はこれだよな」
「冷麦だけじゃ栄養足りないし、これなら豚ひき肉が疲れを取るし元気が出るから」
「優華のお陰で俺は夏も元気だよ」
「悠介は何もしなくても元気でしょう?」
「まあな」
食べ終わって後片付け。
「そういえば俺、この前から考えてたんだけど」
「うん? なに?」
「優華が今度は男に生まれたいって言っただろう?」
「えっ? その話?」
「うん。もしも優華が男になって俺の前に現れたら、俺、もしかしたら男の優華を好きになるかもしれないって思ったんだ」
「えっ? だって男だよ? 見た目も普通に男の人になってたら悠介が好きになる訳ないでしょう?」
「初めて会って、この人と結婚するって直感で思ったって言う人がいるだろ? あれって前世の記憶が知らない内にそう思わせているんじゃないかなって」
「男の私が男の悠介を好きになるかもしれないってこと?」
「ありえないかな?」
「分からない。男に生まれた記憶ないもの」
「そうだよな。ごめん、変なこと言って。とにかく優華が女で良かったよ」
後片付けも済んで……。
「ねぇ明日、夕方までに着ければいいんでしょう?」
「うん。俺の家で母さん達、料理作ってるみたいだから」
「着替えとか用意しないとね。あと化粧品。そうそう、お土産。明日、商店街の和菓子屋さんに寄ってね。それと、ちゃんと悠介のバッグに着替え詰めてね」
「そうか。優華と別々なんだな」
「そうよ。自分の荷物は自分で入れてね」
「明日、昼ご飯済んでからでいいよ」
「いいよね男の人は。着替えさえ入れればいいんだから」
「そういうこと」