二十年目の初恋
お盆休み 2
「シェーバーとか持って行かなくていいの?」
「いいよ。親父の借りるから」
「だから男の人って簡単でいいなぁって思うの」
「駄目だよ。優華はまた女に生まれて来るんだろう?」
「男で悠介の親友なんていうのでもいいけど……」
「本当か? 本当にそう思ってる?」
「嘘だと思うの?」
「今から一緒にシャワー浴びれば分かるよ。明日は早起きしなくていいし時間はたっぷりあるから」
「ゆっくり眠るんだよね?」
「違うよ。今夜は眠らせないから」
「悠介……」
「はい。シャワー浴びるよ」
ってお風呂に連れて行かれた。
「あぁ、さっぱりした。さてとビール。優華も飲む?」
「飲もうかな。明日からお休みだもんね」
「お昼まで寝ててもいいよ。はい」
「ありがとう」
ビールをひと口……
「お風呂上りのビールって何でこんなに美味しいんだろう」
「俺は風呂上りじゃなくても美味しいけど」
「だよね。悠介は……」
何だか可笑しくて一人で笑ってた。
「優華、この頃よく笑うようになったな。前は時々、何か考え込んで暗い顔してたけど……」
「そうだったかな? この頃ね。何してても楽しいの。きっと悠介のお陰だよね」
「優華は笑ってる顔が一番綺麗だし可愛いよ」
「うん。ありがとう。悠介と暮らすようになって、もうすぐ二ヶ月だよね。仕事も辞めて専業主婦みたいな生活が私には合ってるのかもしれないなって。悠介の傍に居られて幸せだと思う。必要とされてるって心から思えるから。だからね。お洗濯してても食事の支度してても楽しいの」
「俺、本当は心配してたんだ。どんなに優華を愛しても優華の心の傷を癒せるのかどうか分からなかったから……」
「悠介がいつも傍に居てくれたから、いっぱい愛してくれたから、私、心から笑えるようになったんだよ。きっと」
ソファーで隣りに座ってる悠介の肩に頭を乗せた。
「何だか眠くなって来た……」
「まだ缶ビール一本飲んだだけだろ?」
「うん。悠介の肩、気持ちいいの。温かくて……」
「眠るにはまだ早いよ。優華」
「あと十分こうしてたら眠っちゃうよ……」
「駄目だよ」
悠介にキスされて抱きしめられた。
「悠介、大好き……」