二十年目の初恋
お盆休み 4
自分の部屋で、なんとなくボーッとしていたら
「優華、今夜は久しぶりにここで寝る? お布団、干しておいたから寝られるわよ」
と母に言われた。
「そうしようかな? お母さんたちの邪魔しちゃ悪いもんね」
って笑ったら。
「悠介さんとは上手くいってるの?」
心配そうに聞かれた。
「うん。大丈夫。悠介すごく優しくしてくれるから。仕事が忙しくて帰りが遅くなっても、ちゃんと私が作ったものを美味しいって食べてくれるし。私の作るご飯食べると元気になるんだって」
「そう。前の人とは大違いね」
「お母さん。もう忘れたから私、前のことは。ごめんね。ずっと心配かけてたよね。私ね、今すごく幸せだから」
「きょうの二人の様子を見てれば大体分かるけど。やっぱり心配なのよ。お父さんも心配してたわ」
「うん。悠介とだったら、きっと大丈夫だと思う。でも……。ごめんね。もしかしたら孫の顔は見せてあげられないかもしれないけど……」
「どういうこと?」
って母に聞かれて私は全てを話した。
「そうだったの。辛かったわね。でも病院で、ちゃんと診て貰った訳じゃないんだから。子供はね、授かりものだから。悠介さんはそのこと知ってるの?」
「彼女の妊娠のことまでは話してないけど……。悠介は子供が欲しくて結婚する訳じゃないから出来なくても構わないって言ってくれた」
「そう。でももしも悠介さんと上手くいかなかったら、その時は私たちのことは気にしなくていいから家へ帰ってらっしゃいね。ここは優華の家なんだから」
「ありがとう。お母さん」
「さぁ、お父さんが待ってるわよ。優華と飲むつもりで白ワイン冷やしてあるの」
「お父さんが白ワイン? 珍しい」
その夜は親子三人で久しぶりに夜遅くまで話した。
*
その頃、悠介の家でも……。親子三人で飲みながら話していた。
「優華ちゃんを大切にしてるんだろうな?」
「うん。もちろんだよ」
「小さい頃から、よく知ってたからね。あの子は気立ては良いし賢いし、おまけに美人だし。前の結婚では、ずいぶん辛い思いをしたみたいだから悠介が幸せにしてあげるのよ」
「分かってるよ。初めの頃は時々何か考え込んでるみたいで暗い顔することもあったけど最近よく笑うようになったんだ」
「そう。ちゃんと悠介が大事にしてるってことかしら?」