二十年目の初恋
秋の日に 1
それからあっという間に三ヶ月が過ぎ、暑かった夏も終わり、すっかり秋の景色に変わっていた。悠介と私は変わらずに幸せな日々を過ごしていた。
変わったことといえば……。夏の暑い日から悠介の優しい(?)特訓が始まり私は車の運転が普通に出来るようになっていた。大好きな水色の軽自動車を購入し最初は初心者マークを付けて。
近くの商店街での買い物は、もちろん続けていたけれど少し離れた大型店への買い物も平日の昼間に一人で行けるようになった。実家や悠介の実家にも一人で車で出掛けられる。悠介を頼らなくても、もうどこにでも行けるようになっていた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「きょうはどこへ出掛けたの?」
「スーパーに買い物に行っただけよ」
「安全運転だった?」
「大丈夫よ。心配しなくても」
「心配するよ。まだ初心者マークみたいなもんだろ?」
「免許を取って十七、八年?」
「でも実質三ヶ月だから気を付けてくれよ」
「そんなに心配なら、ずっと助手席に座っててくれてもいいけど?」
「悪いけど俺は、そんなに暇じゃないの」
「可愛くない……」
ちょっと上目遣いに睨んだ。
「晩ご飯、何?」
悠介は笑顔……。
「えっとね。きょうは、お鍋にした」
「おっ鍋か。すぐ着替えて来るよ」
二人で鶏の挽き肉団子鍋を食べた。この季節はお鍋が一番。野菜もキノコもお豆腐も、たくさん食べられるし温まるし。
「うん。美味い。鶏団子は優華が作ったの?」
「もちろん。鶏挽き肉を買って来て捏ねて丸めて作ったけど」
「これからは毎日お鍋でもいいな」
「そうよね。じゃあ明日はどんなお鍋にする?」
「そうだな。すき焼きかな?」
「すき焼きね。分かった」
「美味かった」
今でも後片付けは、ちゃんと手伝ってくれる。
「優華、コーヒー入れようか? 最近は朝、ご飯が多いからコーヒーあんまり飲んでないんじゃないか?」
「紅茶は飲むけど。最近はホットのミルクティーとかレモンティーかな?」
「じゃあ、美味しいのを入れるよ」
「うん。ありがとう。悠介の入れるコーヒー美味しいから」