二十年目の初恋
秋の日に 2
悠介のたてるコーヒーは香りから違う気がする。ほっとする落ち着く香りなのかな? 私の癒しのアロマテラピー。
「はい。優華の」
ソファーに並んで座って
「う~ん、美味しい。やっぱり悠介のコーヒーは最高だね」
「それ誉め過ぎ。なぁ優華、あと十日だな」
「うん。そうだね」
「もう婚姻届は書いてあるから朝一番で区役所へ一緒に行こうな」
「うん。悠介、後悔しない?」
「する訳ないだろう。優華は?」
「後悔してる」
「えっ? 何で?」
「最初から悠介のお嫁さんになりたかった」
「それを言うんだったら俺も物凄く後悔してるよ。もっと早く優華に自分の気持ちを伝えれば良かったって思うよ」
悠介はそっと抱きしめてくれた。
「だからこそ、これから遠回りした分も二人で幸せになればいいだろう? 必ず俺が幸せにするから。優華に二度と後悔はさせない」
「悠介。私、今、幸せだよ」
「俺も。優華と一緒に居られることが、こんなにも幸せだとは思わなかったよ。これからももっと大切にするからな……」
「幸せって、こういうことなんだって悠介が私に教えてくれたんだよ」
「優華、愛してるよ。ずっと……」
「私も、ずっと愛してる……」
温かい手で頬を撫でられてキスされてた。悠介の深い愛情が痛いほど伝わってくる優しいキスだった。
そして週末……。二人の入籍まで、あと一週間という土曜日。コーヒーと熱々のピザトーストの朝食を食べながら
「きょう、買い物に行かないか?」
と悠介が言った。
「買い物?」
「うん。来週入籍して写真を撮ったら、すぐ旅行だろ? 温泉地はもう寒そうだからコートを買いたいと思って。センスの良い優華に見立てて貰いたいんだけど」
「コートね。私も買おうかな、お揃いで」
「えっ? 今時ペアルック?」
「色違いとかデザイン違いとか、まるっきり同じとは言ってないけど」
「新婚さんなんだからペアルックもいいかな?」
「無理しなくていいわよ」
可笑しくて笑ってしまった。
悠介とデパートへお買い物。何度目だったかな? 紳士服売り場へ行くと暖かそうなコートがたくさん並んでる。