二十年目の初恋
結婚 1
二人にとって大切な日が来ていた……。腕の中で微笑むように眠る優華を先に目覚めた悠介は、ただ見詰めていた。
愛しい思いは一緒に生活するようになって、ますます膨らんで行くばかりで愛し過ぎて壊してしまうんじゃないかと時々不安になる。それ程、優華を愛している自分が不思議ですらあった。
眠っている優華の唇にそっとキスした。
「ん? う~ん、悠介……」
「おはよう。まだ眠い?」
「今、何時?」
「六時を少し過ぎたところかな?」
「そろそろ起きないといけない?」
「まだ大丈夫だよ」
今度はおでこにキスした。
「優華のドレス姿、早く見たくて目が覚めたよ」
「そうよね。花嫁になるんだよね。私」
「そうだよ。世界中で一番綺麗な花嫁にね」
「う~ん、どうかな? 綺麗な人なんて幾らでも居るけど……」
「優華は自分のことが分かってないんだよ。さぁ、コーヒー入れるかな?」
ベッドから起き上がって悠介はキッチンに向かった。
*
そう。きょうは区役所に行ってブライダルショップで写真を撮って悠介と二人だけで旅行をするのよね……。
やっと目が覚めてコーヒーの香りのキッチンに。トーストとコーヒーの朝食を済ませて出掛けるための支度をした。
「メイクしても落とされちゃうわよね」
「いいよ。スッピンで」
「スッピンで婚姻届を出しに行くの?」
「優華はスッピンの方が綺麗だって言ってるだろう?」
「どうもありがとう……」
着替えて旅行の荷物を持って戸締り火の始末、大丈夫。
「さぁ、行こうか?」
「悠介、忘れ物ない?」
「大丈夫だよ」
マンションの玄関に鍵を掛けて車で出掛けた。
*
区役所の駐車場に車を停めて休日用の出入り口から二人で入った。受付には職員が二人。
「お願いします」
婚姻届を出すと記入欄を確認した五十代くらいのベテラン職員らしき女性が
「確かに受け付けました。おめでとうございます」
と笑顔で言ってくれた。
お役所仕事とよく言う。婚姻届も死亡届も非常に事務的に受け付けられ、ご苦労様でしたと味も素っ気もない。婚姻届はにこやかに離婚届は暗い顔で受け取って欲しいなんて誰も考えてもいないとは思うけど……。
優しそうな人生の先輩に笑顔で応対して貰えたことは、きょうの二人にとって何よりのプレゼントだった。