二十年目の初恋
痛み 4
「駄目だ。もう我慢出来ない」
そう言って悠介は私を抱き上げた。
「待って。汗かいたし、このままじゃ嫌……」
そう言うと
「汗をかくことするんだから関係ない」
そのままベッドに運ばれた。ベッドはクイーンサイズ。このベッドで奥さんも抱いたの? 余計なことばかり考えてしまう私……。バカだな。
でもそんなこと、どこかに吹き飛んでしまうくらいベッドでの悠介は逞しくて激しくて、それなのにとても優しくて。私が嫌がることは無理にはシテコナイ。悠介に何もかも委ねて私は、まだ経験したことのない極みにタドリツカサレタ……。
「優華、大丈夫か? 綺麗だよ。最高の気分だ」
「…………」
返事が出来ない。どうなっちゃったんだろう私の体……。
「こんなの初めて……」
そう言うのが、やっとだった。
悠介は優しくキスをして、そっと抱きしめてくれた。
「離さないから。もう絶対、何があっても」
私は何故だか涙が零れて悠介の胸で泣いていた。
心も体も愛されるって、こういうことだったの? 悠介に抱かれる度に違う私が現れるような気がした。
男と女が愛し合うって、こんなに素敵なことだったの?
悠介から離れられそうもないのは私の方だ。
もっともっと知らないこと教えて欲しい。悠介になら、どんなに翻弄されてもいい。もっと悠介を感じたい。ずっと傍に居たい……。
*
十年の結婚生活の中で別れた主人に対して、こんな感情を持ったことは私が覚えている限りなかったと思う。もっと淡々と毎日が過ぎて行った。そんなものなんだと思っていた。
一応、恋愛結婚だったはずなのに……。
「仕事は続けたいのなら構わないよ」
主人はそう言ってくれた。
ちょうど仕事が、おもしろくなって来たところだったから。
子供が出来たら辞めよう。そう思っていたのに……。出来たのは子供ではなく主人の彼女……。
「あなたは私と居る時より彼女と居る時の方が幸せそうに見えた」
私は最後に主人にそう言って家を出た。不思議なくらい悲しくもなかった。それほど気持ちは冷め切っていた。
*
悠介の傍に居ると無理しない自然な私で居られる。それは幼なじみだから? それとも……。
ずっと悠介が好きだった。いつからなのか分からないくらい前から。
私はもう既に悠介を愛してる。ずっと……愛してた。