二十年目の初恋
痛み 5
「悠介……」

「うん。なに?」

 悠介の胸に顔をうずめてる私の頭の上で声がする。

「あのね……」

「どうした? もしかして、もう一回?」

「違うの。そんなんじゃないの」

 悠介が頭を少しずらして私を覗き込む。

「私ね。本当は、ずっと前から悠介を好きだったの」

「えっ? 本当に? どうして言ってくれなかった?」

「だって悠介、マドンナと高校も同じで、まだ付き合ってるって聞いてたし、言える訳ないよ」

「お前、電車通学で女子高通ってたもんな。おばさんの母校のお嬢さん高に」

「行きたくて女子高行ってた訳じゃないよ。本当は悠介と同じ高校行きたかった。でも、マドンナも受けるって。あのマドンナが落ちる訳ないし。高校に入ってまで二人の近くに居たくなかったから。母も女子高に行って欲しいって言うし、それで……」

「俺、優華の女子高の制服姿、見かけたことあったんだ」

「えっ? いつ?」

「高校入って、すぐくらいかな。すごく可愛くて、あの制服。髪が長くてサラサラで眩しかった。優華は、お嬢さんなんだなぁって思った」

「そんなことないよ。父はサラリーマンだし、別にお金持ちじゃないし」

「でも、優華、高校、大学と成績優秀で、そのまま大学に残ったんだろう?」

「たまたまだよ。そんなに優秀でもなかったけど。ちょうど結婚退職で秘書を辞める人がいたから」

「別れた奥さん、お前の高校、大学の後輩なんだ」

「そうなんだってね。おばさんに聞いた。でも四つ、五つ? 下だから接点は無いと思うけど」

「優華と同じ制服着て高校通ってたんだって思ったら親近感湧いて。今、考えると優華の代わりに好きになったんだと思う。あいつには悪いことしたと思ってる。どこか優華に似てたんだ。なぁ、優華……」

「なに?」

「俺たち遠回りしてたんだ。二十年も遠回りしてた。でもまたこうして会えた。こうなる運命だったんだよ」

 悠介の腕で抱きしめられた。
「幸せにするから、俺の傍に居てくれ」
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