二十年目の初恋
痛み 6
「でも、私が悠介を幸せに出来るかどうか分からない……」
「優華が居てくれるだけで幸せだって言ってるだろ」
「それじゃあ嫌なの。私も悠介に何かしてあげられないと」
「毎晩、優華を抱けるだけで俺は充分幸せだけど……」
「そういうことじゃなくて……」
どう言えば分かって貰えるんだろう。
「大切なことだろ?」
そんなに真っ直ぐ目を見て言わないで……。
「そうだけど……」
悠介の瞳に納得させられてしまう。
「ところで、そろそろ夕飯作って貰えるかな?」
「あぁ、そうよね。その為に来てるんだった」
「その為にだけ来て欲しいって言ったつもりはないよ。掃除とか洗濯とか食事の支度だけをして貰いたいなら家政婦さんでも頼めば良いことだし。優華と一緒に過ごしたいから、一緒に居たいから」
悠介に熱っぽい目で見つめられて唇を塞がれた。深いキスをされて唇が離れた時
「夕飯、遅くなっちゃうよ」
って言ったら
「仕方ないな。続きは後で」
って悠介は笑った。
脱がされたものを一枚ずつ拾って身に着けてバッグからエプロンを出してキッチンへ。
さてと、先ずは炊飯器。うん、使えそう。お米を二人分、量ってシンクで洗っていたら悠介がシャツのボタンを留めながら来た。
「エプロン持って来てたの?」
「料理するんだから当然でしょう」
「エプロン姿って、ソソラレルよな」
「もう、悠介は何にでも発情するんだから。邪魔しないでよね」
「エプロン姿に欲情しない男は男じゃない」
対面式のキッチン。カウンターの向こう側に座りながら悠介が言った。
「なに? その変な理屈」
そんな会話をしながらも手元は確実に動いていく。炊飯器に内釜をセットしてスイッチオン。
次は肉じゃが。じゃがいも、にんじん、玉葱の皮をむいて切って、お鍋に入れて水から火にかける。玉葱は後で。
「悠介、サバはどうするの? 塩焼き? 味噌煮?」
「う~ん、きょうは塩焼きの気分かな」
「塩焼きね。分かった」
悠介は椅子に腰掛けたままで料理が出来て行くのを楽しそうに見ていた。