二十年目の初恋
痛み 7
 その次は、もずくを洗って甘酢を作って漬けて冷蔵庫に入れる。お豆腐と玉葱で、お味噌汁を作って、厚焼き玉子を焼いて……。

 そうそう、肉じゃがは、砂糖、味醂、醤油で味付けして玉葱と牛の薄切り肉を入れてコトコト煮る。最後にサバに塩をまぶして焼いて、ご飯も炊けたし出来た。

「悠介、食器は? 適当に使っていいの?」

「あぁ、出そうか」

 食器棚から出してくれた。

「これ、洗ってあるの?」

「う~ん、洗った方がいいかも」

「分かった。洗うから。お箸は?」

「俺のはこれ。優華の箸、買って来れば良かったな」

「あぁ、いいよ。割り箸かなんかで」

 引き出しの中にピンクのお箸を見付けたけど……。食器を洗って拭いて盛り付けてカウンターに並べた。

「出来たよ」

「おっ、美味そうだ」

 悠介は、また椅子に腰掛けて私も隣に並んで座った。

「いただきます」

「肉じゃが、食べてみて。おばさんには敵わないけど……」

「うん、美味い。母さんの作るのに似てるよ」

「本当?」
 ちょっと不安な気持ちで悠介の顔を覗き込んだ。

「本当に美味しいよ。玉子焼きは……うん。美味い」

「子供の頃、どこだったか忘れたけど、お弁当持って出掛けた時、おばさんの作った玉子焼きが美味しくて。確かこんな味だと思って」

「味、覚えてたの? 母さんの玉子焼きの」

「うん。美味しかったから」

「優華、料理上手いよ。惚れ直した。ご飯、おかわり」

「えっ? もう?」
 しっかり食べてくれるのって嬉しい。

「味噌汁も美味い。外食以外の味噌汁、久しぶり。サバも脂のってて美味い。もずく食べたかったんだ」

「いつも外食なの?」

「ほとんどね。やっぱり家で食べるご飯は美味しいよ」

「奥さんは料理上手かった?」

「料理教室に通ってたって言ってたけど、フランス料理とか中華とか、お菓子とか……。普通の家庭料理を作るのは、あんまり得意じゃなかったみたい」

「そうなんだ。やっぱり本物のお嬢さんだったんだね」

「家庭料理を考えたり工夫して普通に作れるのが、一番なんだと思うよ」


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