二十年目の初恋
痛み 9
 洗面台の鏡の前でバスタオル一枚を体に巻き付けてドライヤーで髪を乾かし合って、はい、乾いた。

「優華、ビール飲むか? 飲めるんだろ?」

 お風呂から出てリビングで悠介が聞いた。

「飲めるけど……。それより悠介のシャツか何か貸してくれない?」

 バスタオルを巻いた姿は、どうも落ち着かない……。

「何がいいかな? 探してみるよ」

 クローゼットで、しばらくガサゴソと探してくれた。

「おっ、これがいいかな?」
 と悠介は手に何かを持って現れた。

「これ前に買ったんだけど……。妙に細身で丈が長くて着てないんだけど、どう?」

 それは淡いピンクのクレリックシャツ。襟と袖口が白い生地の男物のワイシャツ。

「あっ、いいかも」
 クレリックシャツって私、結構着てるし。

 渡されてバスタオルを巻いた上から着てみた。襟開きはゆったりして、袖は長過ぎるから腕まくり。丈は、ひざ上のミニワンピくらいで、ちょうどいい。

 悠介に背中を向けてバスタオルをはずしボタンを留めて振り向いた。

「どう?」

「いいねぇ、ワイシャツ姿も。似合うよ」

「悠介、ピンクなんて着るの?」

「普段は着ないな。たまにはって思って買ったんだけど、こんなところで役に立つとは思わなかったよ。あぁ、そうそう、ビールだった……」

 悠介は冷蔵庫を開けて缶ビールを二本出して

「はい、優華」
 一本渡された。

「ありがと」
 プシュッ! お風呂上りの冷たいビールは、やっぱり
「美味しい~っ」

「かなりいけるんじゃないの? 本当は」

「どうかな? 酔っ払うほど飲んだことないから」

「今夜は酔ってもいいよ。後は寝るだけだし、介抱してやるから」

「悠介、困るかもよ。泣き上戸だったりしたらどうする?」

「いいよ、泣いても。思いっきり泣け。我慢することない」

 そんなこと言われただけでも泣きたくなる。

 ソファーに座ってる悠介のとなりに腰を下ろして、悠介の肩に、そっと頭を乗せた。

「どうした? もう酔ったのか?」


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