二十年目の初恋
痛み 11
一人でリビングに戻って冷蔵庫からビールをもう一本出した。ソファーに座ってグィッと飲んだ。苦い……。
優華の結婚生活は、どんなだっただろう? 浮気されるくらいだから、やっぱり幸せではなかったんだろうか?
もしかしてDV? いや、優華の体には傷や痣はどこにもなかった。
半年前に家を出たと言っていた。半年あれば痣も消えるのか?
でも心の中の痣は生涯消えない……。
京都の大学を卒業して、そのまま京都で就職して、二年経って仕事が合わずに帰って来た時には、優華はもう他の男と婚約してた。
帰った翌朝、母さんに
「優華ちゃん婚約したんだって」
そう聞かされた時、頭をガーンと殴られた気がした。
俺は京都で何やってたんだ。もっと早く帰って来れば良かったのに……。後悔した。ものすごく後悔した。でももう遅かった……。
それから俺は就職した今の広告代理店で、とにかく働いた。早く仕事を覚えて一人前の男になりたかった。どんなに寝る時間を惜しんでまで頑張って働いても、優華が俺のところに来てくれる訳でもないのに……。
そんな時、五歳年下の亜美と出会った。優華の高校、大学の後輩だと知って、どことなく優華と似ている気がして好きになった。と思っていた。
とんでもないお金持ちのお嬢さんだと知って驚いたけど彼女のご両親も温和な穏やかな方で
「亜美が好きになった人なら」
と許してくれた。
でも贅沢な生活を何とも思わない生まれながらのお嬢さんがサラリーマンの奥さんになるのは初めから無理なことだった。
一回何万円もするエステに毎週通って、洋服や靴、バッグなどは高級ブランドのものしか買わないし身に着けない。
聞くと親から貰っていたカードで支払っていたと言う。
亜美とは何度も話し合った。実家がどんなに裕福だろうと結婚したからには俺の給料の範囲内で生活してくれないかと。
それでも贅沢が普通の彼女には所詮無理な話だった。
五年で俺たちは別れた。