二十年目の初恋
二人 1
車を降りて後ろの座席からバッグを出して、悠介の後から付いて旅館の玄関に入った。
フロントに行くと単の紬に身を包んだ女将らしき女性に
「いらっしゃいませ。お疲れ様でございました。ご予約承っておりますでしょうか?」
にこやかに聞かれ、悠介が返事をすると
「ありがとうございます。お手数をおかけ致しますが、決まりですので、ご住所とお名前をご記入ください」
悠介は住所と名前を書き、その隣りに妻 優華と書いた。悠介の妻? なんだかピンと来ない……。
「お部屋にご案内致します。どうぞ、こちらでございます」
ベテランの仲居さんかな。案内されたのはフロントのあった本館から少し離れた場所にあった。
明るい本館とは少し趣が違う。別館と言うか、なんだか隠れ家みたい……。いくつか部屋があるみたいだけれど、それぞれが離れている。
「お食事は、お部屋を出ていただいて、向かいにございます”浅葱の間”にご用意致します。六時にはご用意出来ますが、念の為お電話させていただきます。それでは失礼致します。ごゆっくり」
畳を敷き詰めた落ち着いた雰囲気の部屋に入ると、大きな窓から見渡せる遠い山々の景色が、まるで壮大な絵画のように美しくて見惚れてしまう。
ふと目の前を見ると驚いた。この部屋専用の露天風呂が付いている。
「悠介、お部屋に露天風呂?」
悠介は笑ってる。
「知ってたの?」
「まあね」
「それで露天風呂入ろうって言ったの?」
「嫌か?」
「ううん。これなら入れる。誰にも見られる心配ないもの。本当にリスか鹿でも来ないかな?」
景色を眺めていたら悠介に後ろから抱きしめられた。
「優華と旅行するの初めてだな」
「子供の頃、二家族でよく旅行したよ。あと中学の修学旅行」
「大人になってからっていう意味だよ」
「それは、なんか恥ずかしい」
「どうして?」
「だって悠介、妻 優華なんて書くんだもん」
「きっと妻 優華にしてみせるから」
「それって不倫カップルのお忍びの温泉旅行みたい」
「あぁここは、そういう二人にぴったりだろう?」
「私たち不倫じゃないよ」
フロントに行くと単の紬に身を包んだ女将らしき女性に
「いらっしゃいませ。お疲れ様でございました。ご予約承っておりますでしょうか?」
にこやかに聞かれ、悠介が返事をすると
「ありがとうございます。お手数をおかけ致しますが、決まりですので、ご住所とお名前をご記入ください」
悠介は住所と名前を書き、その隣りに妻 優華と書いた。悠介の妻? なんだかピンと来ない……。
「お部屋にご案内致します。どうぞ、こちらでございます」
ベテランの仲居さんかな。案内されたのはフロントのあった本館から少し離れた場所にあった。
明るい本館とは少し趣が違う。別館と言うか、なんだか隠れ家みたい……。いくつか部屋があるみたいだけれど、それぞれが離れている。
「お食事は、お部屋を出ていただいて、向かいにございます”浅葱の間”にご用意致します。六時にはご用意出来ますが、念の為お電話させていただきます。それでは失礼致します。ごゆっくり」
畳を敷き詰めた落ち着いた雰囲気の部屋に入ると、大きな窓から見渡せる遠い山々の景色が、まるで壮大な絵画のように美しくて見惚れてしまう。
ふと目の前を見ると驚いた。この部屋専用の露天風呂が付いている。
「悠介、お部屋に露天風呂?」
悠介は笑ってる。
「知ってたの?」
「まあね」
「それで露天風呂入ろうって言ったの?」
「嫌か?」
「ううん。これなら入れる。誰にも見られる心配ないもの。本当にリスか鹿でも来ないかな?」
景色を眺めていたら悠介に後ろから抱きしめられた。
「優華と旅行するの初めてだな」
「子供の頃、二家族でよく旅行したよ。あと中学の修学旅行」
「大人になってからっていう意味だよ」
「それは、なんか恥ずかしい」
「どうして?」
「だって悠介、妻 優華なんて書くんだもん」
「きっと妻 優華にしてみせるから」
「それって不倫カップルのお忍びの温泉旅行みたい」
「あぁここは、そういう二人にぴったりだろう?」
「私たち不倫じゃないよ」