二十年目の初恋
二人 7
 今までもう何度も同じベッドで眠ったのに……。

 温泉旅館の和室。畳に布団が二組。この状況が、なぜか恥ずかしくて……。

 浴衣に髪も上げて立ち居振る舞いも、いつもと違うからなのかな? 

 そのまま悠介の言われるままに、お布団に入った。

「なんか、時代劇の悪代官の気分だな」

「何それ?」

「よくあるだろう? 美しい人妻とか、お店のお嬢様とか、思い通りにならない女性を無理矢理ってシーン。帯を解いて、アレーッって……」

「悠介、そういう願望があるの? もう……。いやらしい」
 悠介に背中を向けた。

「いや、あれは男の夢だな」

「だから、いやらしいの」
 信じられない。

「現実には有り得ないから夢なんだろう? 男の夢、分かってくれないかなぁ」

「分かりません。だって犯罪じゃないの。好きでもない男に無理矢理なんて絶対に考えられない。絶対に嫌」

「優華、そんなに怒るなよ。冗談だから。元はと言えば優華の浴衣姿が色っぽいから、そんなシーン思い出したんだろう」

「…………」
 そんな言い訳したって駄目ですからね。

「優華、こっち向いて。顔、見せてよ」

「もう、悠介なんか嫌い」

「俺は好きだけど? 優華、愛してるよ」

 冗談だってことくらい分かってるけど……。悠介の方を向くのは、しゃくだから上を向いた。

 すると悠介の大きな骨太のあったかい手が私の頬に触れて……。

「俺が愛してるのは優華だけだ。他の女に興味はない」

「どんなに綺麗な人が悠介の前に現れても? ずっと若くて可愛くて性格も良くて……」

「優華の方が若くて可愛くて性格も良くて綺麗だ。俺が一番優華のことは知ってるだろう。分からない? こんなに愛してるのに疑うのか? 優華」

「ごめん。悠介……」

 そっと手を伸ばして悠介の頬に触れた。私の手に悠介のあったかい手が重ねられ、手をつかまれて指が絡まって、悠介が私の手にキスした。

 そして悠介の唇は私の手を離れて、私の唇に降りてきた。


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