二十年目の初恋
二人 9
「優華……」

 二人で、お湯に浸かりながら悠介が私を呼んだ。

「うん? なに?」
 悠介の顔を見た。

「俺たち、ずっと一緒に居ような」
 これ以上ないくらい優しい顔の悠介。

「ずっと?」

 夜の露天風呂で柔らかい灯りに包まれて二人きり。

「爺さんと婆さんになっても、ずっと」

「悠介のお爺さんって想像付かないよ」

「優華のお婆さんの方が想像出来ないけど? 俺は爺さんになってもパワフルな元気な爺さんで居たいな。ちゃんと優華を抱いてあげられるように」

「お婆ちゃんになっても抱いてくれるの?」

「当たり前だ」

「シワだらけの体でも?」

「俺と一緒に生きた証しなんだから、シワだって愛おしいと思うよ。それに俺だってシワだらけだろう。きっと」
 そう言って悠介は笑っていた。

「悠介は、ずっと私だけを愛してくれる? 絶対に浮気はしない?」

「する訳ないだろう。こんないい女がいつも傍に居るのに、他の女なんて目に入らないよ」

「でも……」

「別れた旦那と俺を一緒にするな。しかし勿体ないよな優華と別れるなんて。つくづく女を見る目のない旦那だったんだな。でもそのお陰で、今、優華と俺がこうして居られるんだけどな」

「悠介。もしも私と別れたくなったら、いつでも言って。ちゃんと別れてあげるから」

「結婚する前から別れる話か? じゃあ、もし優華が俺を嫌いになることがあったら、その時はちゃんと言ってくれるか?」

「うん。今は悠介が大好きだよ。ずっと一緒に居たいと思ってる。でも、これから先の方が長いもの。何があるのか分からない。だから悠介の負担になりたくない。無理して欲しくないの」

「何があっても我慢したりしないで、ちゃんと話し合おう。どんな小さなことでもいいから。二人で生きるって、そういうことだと思う」

 悠介に真面目な顔で見詰められた。

「俺たち、きっと幸せになろうな」


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