二十年目の初恋
愛される資格 1

 翌朝、悠介の腕の中で目覚めて……。

 静かな寝息をたてて眠る悠介の顔を眺めながら、これから毎日こんな日が続くんだ。そう思うと、こんなに幸せでいいんだろうかと考えてしまう。

 もしかしたら大きな『ドッキリ』と書いたプラカードを持った怪しげな男が出て来て「全部、嘘でした」なんて言われるかも……。有名人じゃないし、そんなことはありえないけど……。


 でもそれくらい今の状況が幸せ過ぎて……。

 二十年経っても悠介は大好きだった悠介のままで、私の悠介への気持ちも不思議なくらい色褪せてなくて……。

 二十年後にもう一度出会う運命だったのかな。


 もしも高校生の頃に付き合ったりしていたら、可愛い幼い思い出だけで終わっていたのかもしれない。


 今だから……。

 想いは、ずっと心の奥にしまったまま、お互い辛い思いもしながら別々に生きて来たから……。

 それは、こうしてまた出会うために必要な時間だったんだろうか。

 三十五歳の今だからこそ、とても大切な存在だったことに気が付いたのかもしれない。

 ただ幼なじみの懐かしい思い出の中に居るのではなくて、これから生きていく毎日に傍に居て欲しい、かけがえのない貴重な時間を共有できる存在。

 私にとって悠介は生涯愛したい、たった一人の人。

 悠介にとって、たった一人の人になりたい。私だけを愛して欲しい。私一人だけを……。


 たくさんの男性から愛されたいとは思わない。たった一人の運命の人に生涯変わらず愛されたい。悠介に愛されるだけの価値のある女になりたい。

 愛される資格は、どこで勉強すれば取れますか?

 悠介の優しい声も、逞しい腕も、あったかい胸も、情熱的に愛してくれる悠介の全て私だけのもの。私の全ては悠介だけのもの……。

 悠介が望むものは何もかも受け入れるから。私の全てを懸けて愛して生きていきたいから。


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