二十年目の初恋
愛される資格 3
 朝から一日かかって、もう夕方……。時間の経つのは早い。集中して忙しく動いていると余計に。

「だいたい片付いたかな? そろそろマンションに帰るか?」

「そうね。冷蔵庫の中身も発泡スチロールに入れたし」

「夕飯、どこかで食べて行くか? 帰ったら片付けないといけないから。何が食べたい? 優華の好きなものでいいよ」

「じゃあね……。牛丼屋さんがいい」

「えっ? そんなんでいいのか?」

「私、一度も入ったことないの」

「そうなのか? 今時、珍しくないか?」

「はい。行きましょう」

 悠介の車で牛丼屋さんへ。悠介は特盛りで、私はもちろん普通盛り。

「美味しい。こんなに美味しくて安いんだ」

「そういうこと。サラリーマンの救世主だな」

 普通盛りでも多かったかなと思ったけど、美味しく牛丼を食べて、お腹いっぱい。

「ごちそうさま」

 車は悠介のマンションへ向かう。

 たくさんの荷物で駐車場と部屋の往復を何回したのだろう。なんとか運び終えて、もうクタクタ……。

「終わった~っ」
 悠介の雄叫び……。

「ありがとう。お疲れさまでした」
 本当、感謝してます。

「どういたしまして。俺シャワー浴びるわ」

「うん。そうして」

「優華も一緒に決まってるだろう」

「えっ?」

 やっぱりお風呂に連れて行かれた。汗だくの体がボディソープの泡で、さっぱり。本当に気持ちいい。お風呂から出て

「優華、ビール飲むか?」

「後でいい。スーツだけでもクローゼットに掛けてくるから」

「分かった」


 まず白いコットンのワンピースに着替えて、シワになると困るスーツから片付けた。

 私のマンションの狭い部屋にある造り付けのクローゼットなんかとは比べ物にならないくらい広くて、今夜、運んで来た洋服など楽々収納出来た。


 そういえば半年前、家を出る時に実家へ送った着物。十年の間、一度も袖を通すことも無かった、あの着物たちを送って貰おう。

 悠介との生活の中で着る機会もあるかもしれない。すると後ろから悠介の声がした。

「どう、片付いた?」

「うん。このクローゼット広いから余裕で入った。実家に送った着物も入るかなって思ってたところ」


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