二十年目の初恋
愛される資格 10
悠介に愛されることで私の中の私も知らなかった『女』の部分が次々現れて来るようで途惑っていた。悠介は私の唇に、そっと触れるキスをして
「もう寝ないと。本当に寝坊するぞ」
「うん。おやすみ」
愛する人の胸に抱かれたまま眠った。
朝六時。悠介の腕の中から、そっと抜け出して。何も身に着けていないことに昨夜を思い出し恥ずかしさに急いでシャワーを浴びに行った。
生成りのコットンのワンピースを着てキッチンへ。サラダを作ってコーヒーを入れて、後はトーストを焼くだけ。
寝室に行くと悠介はまだ眠ってる。
「悠介、まだ起きなくていいの ?」
起きない。
「悠介……」
ベッドの端に腰掛けると急に起き上がった悠介にベッドに押し倒された。
「もう、起きてたの ?」
「今、起きたところ」
頬にキスされた。
「おはよう」
悠介も何も身に着けていない。
「このまま優華を抱きたい」
「駄目よ。きょうは月曜日です。仕事に行かないと」
「昨夜の優華をもう一度見たいのになぁ」
「そんなこと……。意地悪ね」
そう言うと悠介は笑っていた。
「コーヒーの香りがする。入れてくれたんだね」
「悠介の入れるコーヒー程、美味しくないからね」
「優華が作ってくれる物なら何でも美味しいよ」
そう言ってくれるだけでも嬉しいけど。
「早く起きないと遅刻するわよ」
二人で朝食、後片付け。
「俺、髭剃らないと」
「男の人は毎朝、大変ね」
「優華だってメイクするだろう ? 時間にしたら俺の方が早いよ」
メイクして着替えてバッグの中も忘れ物がないか点検。悠介も髭を剃り終えてスーツに着替えてる。
「さぁ出来た」
ビジネスマン悠介が言った。
「私、先に出るね」
と言うと
「あぁ、俺も一緒に出るよ」
戸締り、火の始末、大丈夫。二人で一緒に部屋を出て、悠介は車、私はバス停に。
「いってらっしゃい」
「優華、頑張れ。何かあったら、すぐメールしろよ。分かった ?」
「うん。いってきます」
バス停まで五分も掛からない道を歩いた。