二十年目の初恋
専業主婦 1
平日のこんな明るい時間にエプロン掛けて、掃除して、お洗濯して、晩ご飯は何にしようかなんて考えて。専業主婦も、それはそれで楽しいのかもしれない。
梅雨時だというのも忘れそうな晴れた日。ベランダに並んだ洗濯物が風に揺れる。そんななにげない午後……。自分のためにアイスティーを入れてグラスの氷を眺めてる。なんて時間も悪くない。このまま毎日この部屋で悠介の帰りを待つ。そういう生活も、あっていいんだって思える。
幸せって人それぞれで、これが幸せなんだって決まった形なんてなくて。どこで何をしていても感じられるものなんだと思う。
今の私にとって悠介と一緒に居られることが幸せ。そういう私を私自身が抱きしめてあげたいくらい。
仕事で得られる幸せもあるし、仕事に生きる人生も素晴らしいと思う。でも幸せな家庭、心配してくれる家族。それは何より大切なもの。
望んでも得られないことだってある。手に入れても壊れることだって……。そんな儚さも知ってしまったから……。
さぁ、悠介が帰る前に美味しい晩ご飯を作ろう。昨日、買い物した物を眺めて何にしよう ? ご飯を炊いて、お味噌汁、サラダ、メインはハンバーグ、決めた。炊飯器は予約して、お味噌汁は出来た。サラダはラップを掛けて冷蔵庫。ハンバーグは合挽き肉、玉葱、卵、牛乳に浸した食パンを捏ねて、塩、コショーと隠し味に、お醤油。後は焼くだけにして冷蔵庫で寝かす。
悠介が帰るまでにはまだ時間がある。特例で汗をかいたからシャワーを浴びよう。悠介が帰ってシャワーを浴びてる間にハンバーグが焼けるから……。きょうの特例は認めて貰いますからね。一人でシャワー。そういえば、ここで一人でシャワー浴びるの初めて。シャンプーした髪を乾かして黒のカットソーのワンピに着替えた。
しばらくして悠介が帰って来た。
「おかえりなさい」
「ただいま。あれ、優華シャワー浴びた ?」
「うん。悠介が帰ってシャワー浴びてる間にハンバーグ焼こうと思って」
「ハンバーグか。優華の手作り ?」
「もちろんよ」
「じゃあ、きょうは特例は認めよう」
「ありがと。早くシャワー浴びて来て」
テフロンのフライパンでハンバーグを焼く。もうそろそろ焼ける頃に悠介がバスタオルで髪を拭きながら出て来た。