二十年目の初恋
退職の日に 3
バス停でバスを待っていると悠介からメール。
『今どこ ? 仕事終わったから外で食事でもしないか ?』
返信メール……
『大学の外のバス停でバスを待ってる。』
悠介から返信メール……
『すぐに迎えに行く。少し待ってて。』
しばらくして悠介がインプレッサで迎えに来てくれた。
「お待たせ」
助手席に乗り込んだ。
「どこへ行こうか ?」
悠介が聞いた。
「どこでもいい」
連れて行ってくれるのなら。
「きょうは優華の退職のお祝いなんだから、ちょっと高いお店でもいいぞ」
「じゃあ、そうね。イタリアンがいい」
「イタリアンねぇ。あっ、家の会社の近くにあるよ。そこでいい ?」
「悠介のお薦めのお店 ?」
「イタリア人のシェフが焼いてくれるピザが、すごく美味しいって評判らしいよ」
「本格的なイタリア料理なのね。楽しみ。ピザ早く食べたい」
悠介は私の頭をクシュッと撫でた。しばらく車を走らせてイタリアンレストランに到着。悠介は車を降りて助手席のドアを開けて
「奥様、お手をどうぞ」
「どうしたの ?」
「たまには紳士なところも見せておかないとね」
「じゃあ私は淑女 ?」
「最高の淑女だよ。優華は」
お店に入って
「いらっしゃいませ」
「予約してないんですが」
「はい。お席ご用意出来ますので。どうぞこちらへ」
窓側のとても明るい席に案内された。メニューを渡され
「優華の好きなものを注文していいよ」
「コースじゃなくてアラカルトでシェアしよう。いい ?」
「うん。任せる」
「そうね。どれも美味しそうだな……。じゃあ季節の野菜のバーニャカウダ、海の幸のカルパッチョ、和牛肉のタリアータ、ピッツァマルゲリータとサーモンとアスパラのピッツァはハーフで、ペペロンチーノ、ペスカトーラ、それとアルコールフリーのビールって置いてあります ?」
「はい。ございます」
「じゃあグラスで二杯お願いします。デザートは……ティラミス、クレームブリュレ、エスプレッソを二つ。以上でお願いします」
「はい。かしこまりました」