二十年目の初恋
退職の日に 5
「どうしてかな ? 初めて悠介とデートしてるみたいな気持ちなの」
「俺もだ。たまにはこういうのも新鮮でいいだろ ? 結婚してからも時々デートしような」
「うん」
私たちは手を繋いでいた。まるで高校生みたいで、ちょっと恥ずかしかったけど……。悠介の手はいつものように大きくて温かくて、この手は、きっとずっと離さないで悠介と二人で生きて行くんだなって改めて感じた。
「あっ、優華、星が見えるよ」
「どこ ?」
「ほらあっちだよ。あっ流れ星」
「えっ、どこ ?」
「惜しかった。もう消えちゃったよ」
「見たかったのに」
「大丈夫だよ。優華の分も、お願いしたから」
「何を ?」
「二人が幸せになれますようにって」
「本当 ? そんな時間あったの ?」
「実は間に合わなかった」
「やっぱり」
「流れ星は間に合わなかったけど、俺はどんなことをしても優華を必ず幸せにするから心配するな」
「心配してないよ。私、幸せだから。きっとずっとね」
悠介は繋いでいた私の手に、そっとキスして
「この手は絶対に離さないから」
「悠介」
「俺の花嫁の優華は、俺には、もったいないくらい綺麗な花嫁だよ。……優華のウェディングドレス姿、見たいな」
「どうしたの ? 急にそんなこと言って」
「今ふと思った。やっぱり見たい。優華のウェディングドレス」
「でも悠介、気を悪くしないでね。私、前の時、お式も披露宴も、お色直しも三回して、すごく華やかな結婚だったの。それでも別れた……。結婚って、そういうことじゃないんだって身に染みてるの。二人が、お互いを思い遣って心から信じて大切にして、どんなことがあっても一緒に乗り越えて支え合って本当に生涯、変わらないで愛し続けることだと思うの」