二十年目の初恋
退職の日に 6
「優華の言いたいことは俺もちゃんと理解してるつもりだ。こっちもそうとう派手だったから……。式や披露宴はともかくとしても俺の大切な優華の花嫁姿が見たいって思うのは自然なことだろ ? 写真だけでも撮らないか ? 良い思い出になると思うよ。俺たちが五十代、六十代になった時、本当に優華は綺麗だったなって。俺は今の綺麗な優華を忘れたりしないし、ずっと覚えてるよ。でも花嫁姿の綺麗な優華を写真に残しておきたいと思うんだ。嫌か ?」
「嫌って訳じゃないけど……」
「じゃあ、決まりだな」
「悠介も、ちゃんとタキシード着てくれるの ?」
「えっ? 俺 ? なんか恥ずかしいな」
「一緒じゃなきゃ嫌」
「分かったよ。一緒に撮ろう」
「籍を入れるだけの地味婚で良かったのに。お互い二度目だし」
「俺と優華が結婚するのは初めてだろ ? お姫様だっこ、してあげようか ?」
「えっ ? やだ。恥ずかしい」
「そういう写真も記念になって面白いけどなぁ」
「私をからかって喜んでない ? 悠介って意地悪なんだから」
「そんなことないよ。誰よりも優華を愛してるだけだよ」
頬に、そっと悠介のあったかい手が触れてキスされてた。
「さぁ、帰ろうか」
「うん」
車が動き出した。悠介のマンションに着くまで、そんなに長い時間でもないのに運転している悠介の隣で何故かドキドキしている私が居た。まるで二十歳の女の子みたいな……。こんな初々しい気持ちが私の中にまだあったんだ。それが嬉しかった。少しは可愛い女になれるかな ? 悠介に何歳になっても可愛いと思われる、そんな女になりたい。
マンションの駐車場に車を入れて六階の部屋までエレベーター。悠介が鍵を開けて二人で部屋に入った。ドアが閉まって鍵を閉めて、あっと思う間もなく抱き上げられた。
「さぁ、お姫様だっこでシャワー浴びに行くぞ」
「もう、悠介ったら」
彼は笑ってた。
「そういえば、いつもしてたな。お姫様だっこ」