二十年目の初恋
二十年目の再会 8
 車は快調に走って、いつの間にか海岸線まで来ていた。

 窓を少し開けると海の匂い、潮の香りがした。遠浅の砂浜は潮干狩りを楽しむ家族連れであふれている。

「そういえば、一緒にアサリ獲ったね」

「うん。結構、二家族で出掛けたよな」

 悠介は潮干狩り客のいない浜辺の駐車場に車を止めた。車を降りて堤防の階段を下りて砂浜に足を踏み入れた。海から吹く風が気持ちいい。

「なんか、懐かしいね……」

 すぐ近くをヨチヨチ歩きの幼児を連れた家族が、お散歩していた。

「二歳くらいかな。可愛い」

 すると、その子が私の方に向かって歩いて来た。ニコニコの笑顔で私に話し掛けて来る。その子のお母さんが「すみません」と近付いて来る。

「いいえ。可愛いですね。二歳くらいですか?」

「はい。昨日、二歳になったばかりです」

「すごく愛想のいい子ですね」

「全然、人見知りしなくて……。さぁ、行くわよ」

 お母さんは、その子を抱き上げて私に会釈してくれた。

「バイバイ」と私が言うと小さな手を振って「バイバイ」してくれた。

「優華、子供の相手してるの似合うな」

「なぜか昔から子供には、もてるの」

「お前、幼稚園の先生になるって言ってなかった?」

「そう思ってたこともあったけど……。弓子先生、覚えてる?」

「あぁ、幼稚園の時の先生だろ」

「弓子先生みたいになりたいって思ったんだ。そういえば変なこと思い出した……」

「なに?」

「悠介、私のファーストキスの相手なんだよ」

「えっ? なんで?」

「覚えてないの? 幼稚園で悠介が私のほっぺにキスしたの……」

「えっ? 俺が?」

「うん。私、キスなんて知らないから悠介くんが優華のほっぺ、よだれでベチャベチャにしたって泣いたんだよ。そうしたら弓子先生、悠介くんは優華ちゃんが好きだから、ほっぺに触ってみたくなったんだよって……。でも私、しばらくトラウマだったんだから」

「そういえば、そんなこともあったような……。やっぱり俺、優華のこと幼稚園の頃から好きだったんだ」

「よく言うわよ。忘れてたくせに……」


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