二十年目の初恋
退職の日に 7
二人でシャワーを浴びて、ふざけ合いながら髪も乾かし合ってバスルームを出ると
「今夜は楽しかったよ。またデートしような」
「うん。私ね……悠介、笑わない ?」
「笑わないよ」
私を見詰める眼差しが優しい。
「さっき帰り道、運転してる悠介の隣で何だかドキドキしてたの。変でしょう ? 」
「変じゃないよ。俺もだから」
「本当 ?」
「本当だ。そういう気持ち、いつまで経っても忘れたくないなって思ってた」
「うん。私もそう思う」
悠介も私も本当は分かっていた。
あの頃の……。初恋の頃の気持ちを今でも持ち続けたいと願っていること。きょうのデートは初恋の遣り直し。二十年の会えなかった年月を少しずつ取り戻しながら……。
これからの毎日を一日一日が何倍にも感じられるように二人で大切にしながら生きていこうと思っていることを……。
「ずっと悠介に、ときめいていられたら素敵だよね。だから悠介、素敵に歳を重ねてね。私がいつまでも恋していられるように」
「それ大変だな。家に居ても気を抜けないってことか ?」
「そうじゃなくて……。他の人には見せない顔も私だけには見せて欲しい。家ではリラックスして欲しいし。でも男としてカッコイイ生き方をして欲しい。そう思ってるの。それって難しい注文 ?」
「優華が言いたいことは、なんとなく分かるよ。ずっと恋して貰えるように頑張るよ。さぁもう寝ようか」
「うん」
ベッドに入って悠介とおでこをくっ付けて手を繋いで、そのまま眠った。心がとっても満ち足りていて穏やかな優しい気持ちで眠りに就いた。