二十年目の初恋
一日目 1
朝が来て……。携帯のアラームが鳴る前に目覚めた。
目の前で、ぐっすり眠ってる悠介の顔に
「お・は・よ・う」
って声は出さずに囁いた。
そうだった。私は、きょうから出勤しなくていいんだ。記念すべき主婦一日目。そっとベッドから抜け出して着替えて真っ白なエプロンを着けて。
昨夜は悠介と外食したから……今朝は、まだ時間もたっぷりあるし和食にしよう。ご飯を炊いて、お味噌汁を作って、サラダに玉子焼き。そうそう、甘塩さけが冷凍してあった。それも焼いて並べた。準備は完了。
悠介を起こしに行こう。寝室に行くと熟睡してる。そろそろ起きて貰わないと……。
「悠介、起きて、朝だよ」
寝起きは良い方じゃなさそう……。
「悠介……」
隣に、うつ伏せで寝転んだ。すると目を開けた悠介が
「おはよう」
と私の背中にゴロンと乗っかって
「悠介、重いよ。潰れる……」
目をしっかり覚ました悠介が
「あれ。もう着替えてエプロンしてるの ?」
「うん。きょうから主婦だから。取り敢えずだけどね。朝ご飯、出来てるよ。起きて」
「えっ ? もう出来てるの ?」
「ほら、起きてよ」
やっと起き上がった悠介がキッチンに行くと
「すごい。優華、作ったの ?」
「これくらい普通でしょ ?」
「朝の味噌汁の香り、最高だよ」
朝から、しっかり食べてくれた。出勤支度も済んでビジネスマンに変身した悠介に
「いってらっしゃい。あっ、ちょっと待って。ネクタイ曲がってる。はい。大丈夫」
「ありがとう。優華」
そのまま唇に軽くキスされた。
「やっぱり優華が家に居てくれるっていいな」
「そう ? じゃあ、専業主婦になっちゃおうかな」
「いいよ。俺、優華の分まで頑張って働くから。きょうは一日どうするの ?」
「明日、引っ越しだから片付けとかもあるし。それから、このご近所をお散歩しながら散策してみようかなって。商店街あったから良いお店あるかもしれないし。でしょ ?」