二十年目の初恋
一日目 3
すぐに良い香りがしてきた。焼きたてのパンの香り。明るい雰囲気のお店の中に美味しそうなパンがきれいに並べられている。きょうのお昼はパンにしよう。もう少し歩いてから帰りに買おう。
その次は八百屋さん。店頭にはフルーツが色とりどり。野菜も新鮮そうで何よりお安い。ご夫婦で、お店をされてるみたい。ここは毎日でも通えそうだ。
鮮魚店も発見。元気そうなおじさんが、お魚捌いてる。
「きょうはハマチの刺身の良いのが入ってるよ」と言われ
「じゃあ、半身をお刺身に、後の半身は二切れに切って貰えます ?」
「いいよ。まだ他に買い物行くのかい ?」
「はい。じゃあ、帰りに寄っていいですか ? お支払いだけします」と言うと
「後でいいよ。作っとくからね」と言われた。
良いお店を見付けた。なんだか嬉しくなって来た。
精肉店まであった。もうこれで、お買い物は完璧。揚げ物も美味しそうで思わず
「コロッケ二つください」って言ってた。
「はい。毎度あり」
初めてだけど……。
鮮魚店でハマチを受け取り、お支払い。八百屋さんでレタスとトマトと小松菜とキウイを買って。パン屋さんで食パンと美味しそうなクリームたっぷりのデニッシュとメロンパン、カレーパン、シナモンたっぷりスティックと明太子ソフトフランス。名前に惹かれて……。こんなに誰が食べるの ?
あっ、ケーキ屋さん……。今度にしよう。
通りの向こう側にはコンビニとドラッグストア。毎日のお買い物は、この通りで間に合いそう。
悠介、こんな素敵なところに住んでたんだ。ペーパードライバーの私でも困らない。これからの毎日が楽しみになってきた。
マンションに帰って「ただいま」お刺身は早く冷蔵庫。野菜も野菜室に入れた。
もうそろそろお昼。悠介は何を食べるのかなぁなんて考えながら、今、買って来たばかりのパンを食べよう。濃い目のアイスティー、お砂糖は抜きで大き目のグラスに注いで。
「いただきます」
コロッケ。夕飯のもう一品にしようかと思ったけど揚げたての香りに釣られて最初に一口。美味しい。幸せな味がする。手作りコロッケって書いてあった。サクサクで、ちょっとコショーの効いた懐かしい味。
明太子ソフトフランス。パリパリの皮で中はフワフワの香ばしいフランスパンに明太子とバターと少しマヨネーズかな。明太子好きな私には堪らない。アイスティーとコロッケとパンで、もう満足、お腹いっぱい。