二十年目の初恋
一日目 4

 良く晴れた空の遠くから吹いて来る心地好い風が、白いレースのカーテンを揺らして部屋の中を通り過ぎて行く。遠くから子供たちの歓声が聞こえて来る昼下がり。テレビは、あまりつけない。

 でもなんとなく一人のお昼はちょっと寂しくて、お気に入りのCDを聴こう。韓国の、もう今は解散してしまったユニット……。二人の声のハーモニーが大好きでハングルが理解出来てる訳じゃないけれど心に、すごく響いて癒されて、何年も前の曲なのに古さは全く感じない。そんな曲を聴きながら引っ越しの準備、クローゼットの整理をしよう。

 なんちゃってハングルで一緒に歌いながら片付けていたら、そろそろ三時。時間の経つのって意外と早い。お洗濯物を仕舞おうとベランダに出ると、いつの間に ? 暗い雲が掛かって雨でも降り出しそう。梅雨の晴れ間、そうだった。毎日いいお天気で忘れてた。ふんわり乾いた洗濯物は良い香りがして、こんな時に主婦の幸せを感じるんだろうな、きっと。

 平日のお昼って誰にも邪魔されない自由な時間でもあり、誰もいない寂しい時間でもあり。たった一人取り残されたような……。

 でも小さな子供でも居たら、そんなこと言ってる暇もなく、ただただ忙しく、あっと言う間に過ぎてしまうんだろうし。舅、姑、おじいちゃん、おばあちゃん、大家族だったりしたら自由な自分の時間なんて無いんだろうな。

 それぞれの家族に幸せがあって、それぞれの家庭に悩みもあって、きっとそれは外から見ても誰にも分からなくて……。

 家族って一番小さな社会で、そこには喜びも苦しみも悲しみも、家族だからこその憤りもあって、思い遣りの気持ちだけでは解決出来ない問題だって、きっとたくさんあるんだろう。

 悠介と二人で生きていくってことは、ただ幸せなことばかりじゃないって覚悟をしなければいけないことなんだろうな。

 結婚生活を続けていく難しさは、悠介も私も、よく分かっているつもりだけれど……。
< 84 / 147 >

この作品をシェア

pagetop