二十年目の初恋
引っ越し 4
「優華、これでやっと引っ越しが済んだな」
「うん。まだ片付けないといけないけどね」
「それは、ゆっくりして行けばいいよ。優華のマンション、もう綺麗に片付いてるし今から大家さんに鍵を返しに行かないか ? もう、お昼だし外で何か食べてから行こう」
「そうね。明日まで借りてはあるけど早い方がいいわよね」
二人の昼食は回転寿司で済ませ、途中、和菓子屋さんに寄って。大家さんご夫妻は甘い物がお好きだから手土産を買って、引っ越しが済んだご挨拶と鍵を返しに伺った。
「短い間でしたけど、お世話になりました」
「ありがとう。気を遣ってくれて。寂しくなるわね。元気でね」
大家さんの奥様が笑顔で見送ってくださった。
悠介のマンションに戻って
「ありがとう。悠介」
「俺は何もしてないよ。荷物を運んだのは引っ越し屋さんだから」
「そうじゃなくて……。いつも私のこと心配してくれて気を遣ってくれて感謝してるの」
「感謝してるのは俺の方だけど。これから毎日、優華と一緒なんだから」
「でも私、一緒に居ても大したこと、きっと出来ないよ」
「傍に居てくれるだけで良いって言ってるだろう。優華の笑顔が見たいんだから。これからは嫌なことは全部忘れて、毎日俺の傍で笑ってるんだぞ。分かったか ?」
「はい。そうする」
悠介の傍でなら、きっと笑えるから。
「さぁ、じゃあシャワー浴びるぞ」
「えっ ? もう ? まだ三時半だよ」
「汗かいただろう ? 時間は関係ない。汗かいたから汗を流す。当たり前だろ ?」
「そうだけど……。まだ部屋の片付けが……」
「そんなの後でいいの」
お風呂に連れて行かれた。梅雨時の晴れ間。もちろん真夏ほどじゃないけれど確かに汗はかく。
そういえば今年の梅雨は空梅雨 ? 真夏になって、お水は大丈夫なんだろうか……。ダムには水が、ちゃんとあるのかしら……。