二十年目の初恋
引っ越し 5
子供の頃から、いつも思ってた。この国は周りをぐるっと美しい海で囲まれている。だから、どんなことがあっても海水は無くなることはない。だったら海水を真水に変える技術をもっと研究して海沿いの都道府県から山奥の土地まで送り込む方法を開発すれば人々が幸せに生活している土地を有無を言わさず取り上げて、そのままダムの底に沈めるなんて酷いことをしなくてもいいのに……。
蛇口を捻ればいつでも綺麗な水が出る。それは飲んでも全く差し支えない。
海外では有名な観光地を持つ立派な国なのに水道水が飲めないなんて普通にある話だしシャワーの水すら出ない国もいくらでもある。
そう考えるとこの国は恵まれている。
水は生きて行く上で必要な物の中でも基本中の基本。綺麗な水でシャワーを浴びられることにも感謝しなければと思う。
悠介とシャワーを浴びて、すっきり爽やかな気持ちで、お風呂を出た。
「ビール飲みたい気分だな」
って悠介。
「どうぞ。お休みなんだから遠慮することないよ」
「優華も飲む ?」
「眠くなっちゃうからいい」
「いいよ。眠くなっても……。一緒にお昼寝でもするか ? 子供の頃みたいに」
美味しそうにビールを飲んでる悠介の隣。ソファーに座っていたら何だか眠くなって来た。
昼間からお風呂に入ったりシャワーを浴びたりすると体がもう、お休みモードに入ってしまっていて眠くなる。悠介の肩にもたれて、いつの間にか眠っていたらしい。
「優華、寝たのか ?」
「……ううん。起きてるよ」
「起きてるの ?」
「…うん」
でも半分夢の中。というか夢を見てるかどうかも分からない。ただただどうしようもなく眠い……。
「しょうがないな」
って悠介の声がして、ふわっと抱き上げられたような……。ベッドにそっと降ろされたような……。
目を開けようとしたけれど開かない。瞼……重過ぎ。
どれくらい眠ったの ? まだ外は明るい ? そう思いながら目覚めた時、私はベッドで横になっていた。
悠介の視線を感じて……。
「目が覚めた ?」
悠介は私の隣に寝転んでた。