二十年目の初恋
休日 1
そして、あっと言う間に一週間が過ぎた。二人の実家に行く約束の土曜日。私の家が九時、悠介の家が十時。
手土産も忘れずに商店街で見つけた和洋菓子屋さんで家にはケーキ、母が大好きだから。悠介の家には美味しそうな和菓子。悠介のお母さん、お茶の先生をしてるから。
しばらく走って行くと懐かしい街並みが見えて来た。久しぶりに帰って来た気がする。実は同窓会以来だから、そんなに久しぶりでもないけれど。
もう七月。あの日から一ヶ月半が経ったんだ。悠介と再会して、悠介に初めて抱かれた日から……。
「ただいま」
玄関に入ると母が慌てて飛んで来た。
「おかえり。悠介さん、いらっしゃい。 どうぞ上がって。お父さん首を長くして待ってるわよ」
リビングに行くと父は碁盤を目の前に真剣な表情。
「囲碁、始めたの?」
「あぁ、おかえり。悠介君、いらっしゃい」
「お邪魔してます」
「前は将棋じゃなかった?」
「今、ちょっとはまってるんだよ。面白いぞ。なかなか」と父。
「囲碁は全然分からないわよ。将棋なら相手出来るけど」
「もう、あなた、そのくらいにして」
母が冷たい飲み物を持って来た。みんなでソファーに腰掛けて。
「優華、顔色良いようだな。元気そうで良かった」
「うん。元気だよ。あのね、お父さん。実は……」
すると悠介が……
「僕たち結婚しようと思っています。きょうは、お許しをいただきに伺いました」
「悠介君、ありがとう。優華を幸せにしてやってくれるか?」
「もちろんです。約束します。ご心配かけるようなことはしませんから」
「悠介さん、ありがとう。優華のこと、お願いします」
母はエプロンの端で、そっと涙を拭いていた。
半年前……。父も母も私が家を出ることを知って辛い思いをしていた。自分たちのことより何よりも私の幸せを願っていてくれた。
一人娘の私が、まさかバツイチになるなんて。ずっと心配かけて悲しませて、ごめんね。
悠介と、どんなことがあっても幸せになるから。