二十年目の初恋
休日 2
涙が零れそうになったけど、悠介の傍で笑っていたかったから。すると父が独り言のように言った。
「どう頑張っても、私たちは先に逝くから。優華には姉妹も作ってあげられなかった。たった一人残された優華の気持ちを考えると……。悠介君が優華の傍に居てくれたら、もう何も心配することは無い。本当にありがとう。悠介君、優華をよろしく頼みます」
「はい」
悠介の返事が頼もしかった。私は何も言えずに、さっき我慢した涙が零れた。悠介がポケットから、そっとハンカチを出して私の手に持たせてくれた。私が洗濯してアイロン掛けしたハンカチだけど……。
「そろそろ悠介さんのお宅に伺う時間じゃないの ?」
「あ、うん」
「じゃあ、また伺います」
悠介が言って私たちは悠介の家に向かった。
「良いご両親だな。優華が心配でしょうがないんだろうな」
「うん。でも、あんな風に聞いたことなかったから……」
「思っていても普段は口に出すことじゃないし。本当に両親に愛されてるんだな。優華を必ず幸せにする。ご両親との約束だから守ってみせるよ」
「悠介……」
また涙が零れそうだった……。
悠介の家に着くと、おばさんは外で待っていてくれた。
「優華ちゃん、いらっしゃい。よく来てくれたわ。入ってちょうだい。お父さん、お待ちかねよ」
「母さん、何も外で待ってなくても」
「少しでも早く優華ちゃんの顔が見たかったの」
ほらね。 悠介は私に目で合図した。
「お邪魔します。おじさん、ご無沙汰してました」
「やぁ、優華ちゃん。相変わらず綺麗だね。本当に良く来てくれた。さぁ座って」
「はい。失礼します」
和室の座布団に座った。
おばさんが
「そうそう、何か飲み物持ってくるわね」
「あっ、お構いなく」
「今、優華の家で、いただいたから。母さんも座って。話があるんだ」
「そう ?」
おばさんも座った。
「優華と結婚しようと思ってるんだ。さっき、優華のご両親にも認めて貰った」
「そうか。分かったよ。おめでとう」とおじさん。
「優華ちゃん、ありがとう。悠介のこと、よろしくね。やっと思いが叶ったわ」