二十年目の初恋
休日 4
二人の母親が心を込めて作ってくれた温かな家庭の味も、とても美味しくて飲み過ぎたのか食べ過ぎたのか、男性三人は揃って横になって眠ってる。
母は飲めないし、おばさんと私は少し飲んだだけだから女性三人で、おしゃべり……。
「優華ちゃん、こんなこと聴いていいのかしら……。悠介とは上手くいってるの?」
「はい。実は……。一週間前からなんですけど悠介さんのマンションに一緒に居るんです」
「あらそうなの? あんたのマンションは引き払ったってこと? 言ってくれれば良かったのに。そうしたら引っ越しも手伝えたのに」
「いいじゃないの。十九や二十歳の子供じゃないんだから。もう優華ちゃんも悠介も何でも出来る立派な大人なのよ。二人が幸せなら何も言うことは無いわ」
おばさんは笑顔で言った。
「そうね。本当にそうよね……」
母は感慨深げ。
「それで悠介は優華ちゃんを大事にしてるのかしら?」
「はい。何を作っても美味しいって食べてくれるし私のことをちゃんと考えてくれてますから」
「悠介君、昔から優しかったから。優華、今度こそ幸せになれるわよ」
「そうね。優華ちゃん、随分辛い思いもしたのよね。ごめんなさいね。お母さんから少し聞いてたのよ」
「あっ、いえ。本当のことだから……。でも悠介さんのお陰で、もう思い出すことも無くなりました」
「もし悠介が優華ちゃんを大事にしないようなことがあったら、いつでも言ってね。私が叱り付けてやるから。優華ちゃんは誰よりも幸せにならないとね」
「おばさん、ありがとう。でも大丈夫です。本当に悠介さんには優しくして貰ってますから。私、きっと今が一番幸せなんだって思います」
「そう? それならいいんだけど。悠介も、色々あったから……。でも今は本当に幸せそうよ。見てごらんなさい。あの悠介の寝顔……」
「三人共、幸せそうな顔して眠ってますね」
それから夕飯も、みんなで楽しく食べて、後片付けも済ませて。悠介のアルコールがすっかり抜けるのを待って
「たまには泊まって行けばいいのに……。明日も休みなんでしょう ?」
とおばさんに言われながら……。
「着替えとか何も持ってないし、また近い内に来るよ」と悠介。
「そうね。楽しみにしてるわ」と母。
「運転、気を付けて帰れよ」とおじさん。
「優華、元気でな」と父。
「お父さんも、囲碁、頑張ってね」そう言って悠介の車に乗った。