明日の君と
私は朝日奈君に連れられてサンシャインの水族館に来た。
彼は入り口で入場券を2枚買って私に手渡した。
「いいわよ、朝日奈君。自分の分くらい自分で払うわよ」
私は千円札を渡そうとしたが、朝日奈君は受け取らなかった。
「いいっスよ、これくらい。それにホテルに優待券あったからかなり安くなりましたし」
そう言って彼は微笑んだ。
「割引券あったから、ココ来たの?」
そう訊いた私に、
「ん、それもありますけど、ほら、夕べ色々話したじゃないっスか?それで七尾さん、僕のせいで落ち込んでたりしたら悪いかなって。少しは、気分晴れないかなって。ん、余計なお世話でしたか?」
と、下を向いてボソボソ彼は言った。
色々気にしてくれてたんだ。優しいんだね、朝日奈君。
「朝日奈君、ありがとう」
私はそれだけ答えた。
「すみません、実言うと、僕も少しだけ気が滅入ってたんで、ちょっとだけ気晴らししたかったんス」
メガネの奥の目を細めて彼はそう付け加えた。
「なんだぁ~、今の言葉なかったら、ちょっとカッコイイと思ったのに」
私はイタズラっぽく言った。
「あぁ~、そうなんだぁ~、マジ失敗。じゃあさっきの発言は無しってことで」
朝日奈君は大袈裟に言って笑った。
「ん~、今更無理ね」
私も笑顔で答えた。
私達はゆっくりと時間の許す限り館内を見て回った。
思えば、久しぶりかな、こうした時間をすごすのは。