明日の君と
午後の1時を過ぎた頃、私達は水族館を後にして池袋駅に向かった。
今から空港に向かえばフライトまでにお土産を買う時間も充分とれるだろう。
「朝日奈君、ありがとうね。実は夕べあまり寝られなかったの。でも、朝日奈君のおかげで少し元気になれたよ」
私はモノレールの車内から見える東京湾を見ながら言った。
「いえ、僕のほうこそ。それにあの話を始めてしまったの僕だったし。それで、七尾さんが辛い思いされちゃったんじゃないか、と思ってしまって、すみません」
「朝日奈君、また『すみません』て言ったね。謝りすぎよ。朝日奈君が謝ることなんてなにもないじゃない?考えすぎないで。今日は楽しかったんだから」
そう言って私は彼に微笑みかけた。
「七尾さん、ありがとうございます」
そう言って彼も笑みを浮かべ、イタズラっぽく続けた。
「それに実は僕、スゴく楽しかったんス。七尾さんみたいなキレイな人と一緒にデートみたいなことできて」
「朝日奈君、調子にのりすぎよ」
私はワザと厳しい口調で言ってみた。
すると彼はシュンとして
「すみません」
と、また謝った。
私はそれが可笑しくひとりで笑い
「また、いつかどこか遊びに連れて行ってね」
と、朝日奈君に言った。
彼は一瞬驚いたような顔をして
「またお誘いしていいんですか?」
と、真剣に訊いてきた。
「多分、亜季さんも、一也も遊びに行くくらいなら許してくれるわよ」
一也、私ね、頑張って一歩だけでも踏み出そうと思うの。
今までみたいに、自分の中に閉じこもっていたらなにも変わらないと思うから。
いいよね?一也。