明日の君と
星々の河
数日たって、中野さんから連絡があった。
今日退院したとのことだ。
で、明後日にプラザホテルの中華料理店で快気祝いするから来てね、とのことだった。
その日はバイトがあったが、早めに切り上げさせてもらうことにた。
手ぶらでいくのもなんなんでカスミソウの花束を買って行った。
割と高いのね、カスミソウって。
中華料理店につくと中野さんとお母さん、それに温和そうな紳士が1人、それと里沙さんがいた。
「イツキ、こっちこっち。お父さん、彼が噂の武田樹君」
「香奈の父です。この度は香奈が色々お世話になりまして」
「武田です。今日はボクなんかをお招き頂きまして、ありがとうございます」
そんなボクらのやり取りを見ていた中野さんが口を挟んだ。
「もう、2人とも堅苦しい挨拶なんかいいから、ン?イツキ、それは?」
「あっ、退院のお祝いです。どうぞ」
ボクはハイと中野さんにカスミソウの束を手渡した。
すると、中野さんは赤くなって、あ、ありがとうと言いながら、うっすら涙を浮かべはじめた。
彼女、とても幸せそうな顔をしてる。
そんな中野さんに面食らって里沙さんを見ると、彼女はボクらを見ながら優しく微笑んでいた。
な、なんだこの雰囲気は??
「イツキ、優しいんだね。私、花束なんてもらったことなかったから嬉しくって」
なんか、なんだ?
でもなんか、中野さんいじらしいというか、なんか………
かわいい??
どうした?ボク?
なんか、かわいく思えた中野さんのせいかどうかは判らないけど、その後の会食で主役を差し置いてボクはかなり飲んでしまった。
結果ボクはウダウダになってしまい、なんだか、自分の実家のことや子供の頃の話を中野さん一家、そして里沙さんに大演説していたとのことだ。
イマイチ記憶がハッキリとしていないのだが。
それが原因の大半を占めてると思われるが、中野さん一家と里沙さんは、ボクの実家のペンションに泊まりたいと言ってきた。
もしかして、無理な売り込みでもしてたのかな?
そしてボクはその場で母親に携帯をかけていたとのこと。
「母さん?ペンションの宿泊希望があるんだけど、来週月曜から2泊で2組大丈夫?」
今回の件、ボクの酔った結果が実家の商売に繋がるということとなったわけだが、それなのにボクは無給で奉仕することを親から強要される運びとなった。
労働基準監督署に訴えたら勝てるんじゃないかと思いつつも、色々お世話になった親には頭が上がりません。
バイト先の喫茶店に実家に帰るからと一週間の休みをもらって、月曜日の朝ボクは一足先にバイクで清里の実家に向かった。
中野一家と里沙さんは中野さん(父)の運転で午後出発するとのことだった。
母親はからかうようにボクに言った。
「あんたなに?お嫁さん候補の家族を早くもご紹介なの?全く手が早い子だねぇ。お父さんはすごい奥手だったのに、誰に似たのかしらね?それはそうと麻貴ちゃんとはどうなったの?」
麻貴子、やはりその名前でるよなぁ。
例の入学2日目にしてボクがフられた元カノの名前だ。