明日の君と



入学式を終え立派な講堂から出ると、サークル勧誘が賑々しく行われていた。
いくつかテニスやなんだのサークルに声を掛けられたが膝が不安で断った。
でも友達欲しいし、なんかサークル入いりたい気持ちはあった。
かといって、スポーツ系はやはり無理だし、マジなにやろうかと10秒ほど真剣に悩み、次に声を掛けてきた文科系にとりあえず入っとけってことに決めた。

「そこの背の高い君」

あっ、きた!
でも、テニスやオールラウンドならさっきみたいに丁重にお断りしなきゃな。

「英会話って興味ある?」

ESSって書いたビラを持った派手な女性が近寄ってきた。

「英会話ですか?」

虚を突かれた感じだった。
だってその派手な女性、見るからになんかのイベント系サークルが似合いそうだったし。

「どんな活動してるんですか?」

正直興味無かったが、さっき自分で決めたルールに則り、興味あり気に聞いてみた。

「普段は仲間と英会話をして、年に数回他大学と英語でのディスカッションやディベート。それに春休みに合宿やって英語劇を作って発表したりするのよ」

「ボク、日本語と甲州弁しか話せないけど大丈夫ですかね?」

とりあえずの軽口をきいてみた。

「関西弁しかしゃべれないのもいるから、全然平気」

甘い香水を匂わせながら彼女は笑って言った。

「とりあえず明後日、説明会あるから来てね。それとも、今入っちゃう?」

「あぁ、今から入いれるなら入りますよ」

「あら、ありがとね。じゃ、ここに名前書いて」

入会申込書と偉そうに書かれた紙にボクの名前である武田樹と書いた。

「ふ~ん、武田君ていうのね。下の名前なんて読むの?キ?」

「んなアホな。イツキですよ」

「あら、ゴメンね。私帰国子女だから漢字苦手なの」

カラカラ笑いながら彼女は言った。
どこまで本気なんだか。

「おい、中野、新人か?」

厳つい、ヒゲの剃りあとがやけに青い男が背後からやってきた。
この派手な人、中野さんていうのか。

「ん、部長、彼今から入っちゃうって。ね、武田君?」

「よろしくお願いします。武田樹です」

高校時代の体育会系のノリでビシッと挨拶してみた。

「あっ、あぁ、どうも、部長の山下です。入会してくれてありがとう」

ジョリヒゲの山下部長は少し面食らったようだった。

「武田君、明後日の説明会のあとフライング新歓コンパするけど来る?」

タレ目を上目づかいにして派手な衣装の中野さんが聞いてきた。

「ハイ、喜んで」


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