明日の君と



ボクは、夏の日差しで温室と化した自分の部屋の床の上で不快な寝汗に目を覚まされた。
確か昨夜、バイトの後、里沙さんと香奈さんと飲みに行った。
軽い二日酔いの頭痛を感じる。
眠気と酔いで朦朧としながらだが、習慣でタバコに火を点けた。
カーテンと窓を開け吸い込んだタバコの煙りを思い切り吐き出した。
ふと、右手に持ったタバコに違和感を感じた。
フィルターに赤いものが付いている。
血かと思い唇を触ってみた。
ボクの人差し指には血ではなく口紅らしきものが甘い香りとともに付いていた。

なぜ?

当然ながらボクに女装癖などないし、口紅など塗る習慣もない。

あっ!!

き、昨日、香奈さんが、確か、この部屋にいた!

ボク、も、もしかして、キスでもしちまったのか!?

思い出せない。

よく、考えろ。
確か昨夜、里沙さんはおばあさんが入院したとかで四国に今日から戻ると言っていた。
で、飛行機の都合早めに帰って行った。
うん、それは覚えている。

で、里沙さんが帰ったあと香奈さんと2人で飲んでいて、酔いつぶれた香奈さんを背負って、うちに来たような気がするが。

で、なんでボクの唇に口紅がつくの?

携帯が鳴った。
香奈さんからメールがきていた。

『夕べは酔いつぶれちゃって、イツキの家に泊めてもらったみたいだね。ゴメンね。朝起きたらイツキが床に寝ててビックリしたよ!イツキが起きるの待ってようかと思ったけど爆睡してたから先に帰っちゃった。ご迷惑おかけしました、反省してます。ごめんなさい

 香奈より、心をこめて(笑)』

ん?
そういえば、寝てる時なにか、ヒンヤリしたものが額に触れて一瞬目を覚ました記憶が。

その時窓に映った自分の顔を見てボクは心底フッ飛んだ。
額には『肉』の一文字が書かれていて唇は真っ赤なタラコ唇になっていた。

ふ・ざ・け・る・な・っ!



< 28 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop