明日の君と
どうにも、気持ちが入らず、ややもすると涙が流れそうになる。
夕べ一睡もできなかった。
昨日、彼女から別れを告げるメールが届いた。
確かに浪人中はあまりかまうことできなかったし、ボクが上京してしまい地元の短大に通う彼女と距離はできてしまったわけだが。
にしても、ひどくないか?
入学して2日目だよ。
彼女は来年には社会人になるわけだが、そのことも色々彼女は引っかかったらしい。
あぁでも、大学入学2日目にフられたことには変わりない。
これから、楽しいことがたくさんあると思った翌日からって。
せめてメールじゃなくて電話にしてくれよ。
悲しすぎるよ。
だから電話もしたけどさ、涙声で
『ごめんなさい』
と繰り返されてはね。
自分の甲斐性のなさ、彼女の心変わりに、混じり合った怒りと悲しみを感じてしまい、泥沼気分全開で大学生活3日目を迎えたわけで。
まぁ、そんな状況でもとりあえず、ESSの説明会には来た。
前で山下部長がなんかしゃべってるけど、なんも聞いてなかった。
「武田君。来るんでしょ、コンパ」
ジーンズ姿の中野さんは、今日は普通の格好だった。
「中野さん、こんちわ。行きますよ。今日はおとなしい格好ですね」
「なにアンタ、ケンカ売ってんの?」
右耳に2つ、左耳に3つのピアスをつけた中野さんは怒ったふりをした。
怒った表情でも大きなタレ目は怒っているようには見えなかった。
で、新歓コンパに来たわけだが、なんか、すんげぇ汚い居酒屋の座敷にいる。
だけど、そんなことは何の問題にもならないことが起きた。
だって、前だけ見ていればなんも感じられないから。
つか、前しか見たくない。
彼女にフられたことも、もう、正直どうでもよくなった。
これは、哀れなボクに神が与えた慰みだろうか!
隣でボクの腕に、腕を絡めギャーギャー騒ぎながら酒を飲む中野女史とはえらい違いだ。
確かにボクは、まだ大学に入ったばかりで、人生経験も大してないガキで、田舎育ちだから社会慣れもしてないけどさ。
こんなことってあるんだね。
心底ヒトメボレってやつ。