明日の君と
ボクと香奈さんは近くのショッピングモールに向かい、マグカップとアイスコーヒー用のグラスを探した。
香奈さんは見かけによらずこだわりがあるようで、随分と時間をかけて選んでいた。
おかげで店を出る頃には9時をまわってしまった。
「遅くなっちゃったね。イツキ、バイクで送ってくれる?」
香奈さんはニコッと笑いながら聞いてきた。
「いいっスよ、じゃあ荷物を置きにうちに一旦帰りましょ」
喉もと過ぎればナントやらで、ボクは正直、香奈さんと仲直りできたことにホッとしていた。
ボクは香奈さんにヘルメットを渡して愛車の400CCのエンジンをかけた。
「イツキ、このバイクって前の彼女乗せてた?」
「乗せてませんよ。つか、そんなこと訊いてどうするんすか?」
「へっへっへ、じゃあ私が第1号だ」
香奈さんは嬉しそうに言った。
「残念でした。香奈さん入院した時に里沙さん乗せて家に送りました」
「ありゃ、里沙に先越されてたか」
後部シートに乗った香奈さんはボクにしがみつくように腹の前に手をまわしてきた。
「あ、あの、香奈さん、後ろ乗る時はシートの境のベルトを左手で持って右手でシートの後ろの辺持ってもらえません?」
「そうなの?こうかな?でもバランス悪くコワいから、やっぱイツキにしがみついていい?」
香奈さんはオズオズと言った。
なんか、そう言われると色々意識してしまいそうでボクはついつい軽口で答えてしまった。
「あまり手の位置を下げなければいいですよ」
ボクんちから香奈さんちまでだいたい15分程でつく予定だ。
ただ、背中に感じる香奈さんの、その、柔らかいカラダはなんて言うか、その、ボクの胸や股間を熱くしてしまい、邪念を抑えるのに非常に苦労させてくれた。
そんなボクの運転を神様は危なく思って、頭を冷やせと言いたかったのか、はたまた、ボクが体から発する熱気が雨雲を作ってしまったのか、香奈さんちまであと5分くらいの所で雨が降り始めた。
そして到着する頃はバケツをひっくり返したような降りになっていた。
「なによぉ~この雨、パンツまでビショ濡れだよぉ~。イツキ、ゴメンね。これじゃ危ないから止むまで雨宿りしてったら?温かいコーヒーくらいだすよ」
香奈さんはそう言って玄関に招き入れてくれた。