明日の君と


グズる香奈さんを部屋にあげ、ボクはさっき彼女に言ったようにコーヒーをいれる準備をした。
ベルで買ってきた(一応社員価格で買った)モカをミルにかけフィルターに入れてコーヒーメーカーにミネラルウォーターをいれた。
その間にマグカップをお湯で温め、牛乳をミルクパンに入れ軽く火にかけ泡立て器で泡立てた。
モカの香りが部屋に広まった頃、温めたマグカップにモカを注ぎそこに泡立てたミルクを加えた。

「はい、香奈さんの好きなカフェオレですよ。店で飲むほど美味しくないけど」

ボクは香奈さんにマグカップを手渡した。

「ん、アリガト」

彼女は鼻をグズグズさせながらカフェオレを受け取った。

「ん、おいしいよ、イツキ」

そう言うと彼女の瞳から再び大粒の涙がこぼれ落ちた。

「か、香奈さん?ど、どうしたの?」

涙の理由がわからずボクは困惑してしまった。

「昨日のこと」

そう言うと彼女は再び黙り込んでしまった。

「昨日のことね、ボクはね、スゴくショックだったんですよ」

ボクは香奈さんにというより、むしろひとり呟くように言った。
彼女は何も言わず濡れた大きな瞳でボクを見つめていた。
ボクは視線を外して自分の右手にあるマグカップを見つめながら続けた。

「香奈さん、彼氏いたんですね。それなのに、ボク、ボクは………」

その後の言葉を、ボクは口から出すことが出来なかった。

< 40 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop