明日の君と
ボクは壁に寄りかかりながら床に座った。
そしてタバコに火をつけ大きく吸い込んだ。
香奈さんはボクの隣に座り肩にもたれかかってきた。
「里沙ね、本当に去年、すごく大変だったんだ。里沙と一也って、さスゴく仲良くてね。ふたりしてノンビリホノボノって感じのお似合いカップルだったんだ。それが一也のヤツ、突然逝っちゃってさ。里沙の落ち込みようったら見てられなかったんだ」
香奈さんは、ボクの知らなかった頃の里沙さんの話を始めた。
「摂食障害にもなったりしてたんだけど、どうにか立ち直ってくれてね、今年の春には、やっと普通に学校来れるようになったんだよ」
「香奈さんがずっと慰めたり、励ましたりしてあげていたんですね」
香奈さんは首を横に振り、続けた。
「私はなにもできなかったよ。里沙が自分の力で立ち直ったんだもん。でも、アンタには言ったんだね。まだ一也のこと忘れられないって。正直、私ね、言い方悪いけど、アンタが一也の代わりになってくれないかなって思ってた時もあったの」
ボクは黙って香奈さんを見つめていた。
「ほら、アンタら偶然小学校の同級生だったろ?それにイツキって歳の割に分別あるってか、落ち着きあるし、なにより里沙に惚れてたでしょ。もし、里沙がイツキとうまくやれるんなら、私の気持ちは抑えなきゃって考えてたの」
香奈さんはフッと溜め息をついた。
「でもダメね、私って、そう思えば思うほど、アンタへの気持ち抑えることができなくなったの」
ボクは胸にこみ上げてくるものを感じ、彼女の肩をそっと抱き寄せた。
「ボクは香奈さん、アナタが好きです。香奈さん、アナタもボクのことを好きでいてくれるのならば、ちょっとクサイ言い方だけど、もうなにもボクらを止めることはできませんし、止めさせません。それで、いいじゃないですか。何があっても、一緒にいましょう」
「イツキ」
香奈さんはまた涙を浮かべ
「ありがとう、イツキ」
と言ってボクの首に抱きついてきた。