明日の君と


ボクらは朝まで、壁にもたれ掛かりながらずっと語り合った。
時折キスをしたりもしたが、それ以上のことはお互い望まなかった。
それよりも、ボクらは自分達をお互いに伝えあうことに夢中になっていた。
幼い頃の思い出、初恋のこと、家族との思い出、初めて付き合った異性のこと、そして今、お互いを想う気持ちを。

朝がくるまでにカフェオレを3回も淹れた。
その頃には香奈さんは、すっかりボクよりも上手にカフェオレを淹れるようになっていた。
カップ選びといい、ボクより喫茶店のバイトには向いているかもしれない。

窓からはうっすら朝日が差し込み始めた。
今日も大学は自主休講にすることにした。
香奈さんもそれに付き合ってくれた。
ボクらは昼までお互いの手を握りながら、浅い睡眠をとった。
ふと目を覚まし隣を見ると、そこには香奈さんが安心しきった表情で眠っている。
ボクはその愛おしい寝顔に軽くキスをして再び眠りについた。
この幸せを、この手にいれた幸福を、絶対に手放したくないと強く思った。

昼過ぎにボクは目を覚まし、出かける準備をした。
香奈さんもその物音に目を覚ましてしまったようで、隣にボクがいないのに気づいて一瞬不安な顔をしたが、キッチンにいるボクを認め寝ぼけ眼のまま微笑んだ。

「イツキ、おはよー。へへ、なんか照れくさいや」

彼女の言葉に改めて、ボクは幸せを感じた。

「これからベルでバイトだから行くけど、香奈さんも行きます?」

彼女はニッコリと満面の笑みで頷いた。

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