明日の君と
バイトが終わるとボクは一度家にバイクをとりに戻った。
そして香奈さんに、今から向かうと連絡をいれた。
里沙さんはすでに香奈さんちにいるらしかった。
途中コンビニに寄り、店頭に並び始めたばかりの肉まんを3つとお茶のペットボトルを差し入れに買った。
香奈さんの家の前にバイクを止め呼び鈴を押すと、香奈さんと里沙さんが笑顔でボクを迎えてくれた。
「おつかれさま、イツキ。さぁ、あがって。さっきね、ピザ頼んどいたけど、イツキ、苦手なものないよね?」
香奈さんは微笑んで訊いてきた。
「あっ、いや、実はトマト食えないっス」
ボクは靴を脱ぎながら苦笑いで答えた。
「マジでぇ?トマトいっぱいのったピザ頼んじゃったよ。まぁ、好き嫌いの克服だと思って無理してでも食べなさい」
香奈さんはニヤニヤしながら言った。
おそらく、無理矢理にでもトマトを食わされるんだろう、ボクはある種の覚悟ができてた。
ピザが届いてからボクらはビールで乾杯した。
ボクは苦手のトマトを除けながら食べていたが、香奈さんに見咎められ無理やり口に押し込まれた。
里沙さんもそれを見て大笑いしていた。
「ねぇ里沙、聞いて」
香奈さんは不意に真剣な表情をして里沙さんに話し掛けた。
「香奈、なに?」
里沙さんは香奈さんを見た。
「里沙、実はね、私とイツキね、付き合う事になったの」
里沙さんは目を丸く見開いた。
そしてゆっくりと優しく微笑んだ。
「香奈、武田君、おめでとう。ケンカしちゃだめだよ。でも、よかった、ふたりお似合いだと思ってたから」
「里沙ぁ、ありがとう」
香奈さんは大きなタレ目に涙を溜めていた。
「武田君、香奈を泣かしちゃダメだよ。ああ見えて案外女の子だからね」
そう言って、里沙さんはイタズラっぽく笑った。
「なんだよ、里沙、案外女の子って」
香奈さんは怒った顔しながら笑った。