明日の君と
ふたりなら
ボクはベルの店長に明日と明後日の休暇を申し入れた。
「なんだ?武田君、デートか?忙しい土日だってのに、ま、いいか、その代わり土産話はガッツリ頼むよ」
店長はヒヒッと笑いながら了承してくれた。
明日は香奈さんとドライブに行く約束があった。
因みに日曜日は彼女の誕生日で、買い物に行って何らかのプレゼントを買ってあげる約束になっている。
ボクは山梨・富士五湖観光マップなる本を買って帰り、明日のドライブコースを考えていた。
とりあえず本栖湖に向かう予定だけは決めていた。
あとのコースはまだ決めかねていた。
他の富士五湖の湖をすべて巡る富士五湖弾丸巡り計画にしようか、本栖湖から富士宮に抜け朝霧から白糸の滝に向かう山梨―静岡越境作戦にしようか、はたまた、甲府に出て勝沼あたりでワインでも買って帰るヤッパリ酒でしょツアーにするか。
香奈さんのためにできることを、彼女の喜ぶ顔を見るために、一生懸命考えることが楽しくてたまらなかった。
そして一緒に同じ時を共有できることが、待ち遠しくてたまらなかった。
携帯が鳴った。
香奈さんからだ。
『もしもし、イツキ?明日何時に出発するの?お弁当とかいる?』
彼女の声は幾分弾んで聞こえた。
「渋滞にハマるとイヤだから、7時頃出たいんですけど、早すぎかな?弁当は食あたりしないものでしたらウレシイですけど」
ボクは笑いながら答えた。
『7時ね、わかった。ところでイツキ君、食あたりとはなんだね、失敬な』
「ハハハ、すみません、楽しみにしてますよ、香奈さんの愛情たっぷり弁当」
『ん~、あまり期待されても、実のところ困っちゃうんだけどね。私、料理下手だから』
「ほら、料理は気から、って言うじゃないですか。ん?そりゃ、病は気から、か」
『私の料理は病かっ!』
そんなくだらないやりとりすら楽しくてしかたなかった。
今夜は遠足前の小学生のように眠れないかもしれないなぁ。
そういえば、本当に遠足の前の日に眠れなくなって母親に泣きついたことあったっけなぁ。