明日の君と
その後はさしたる渋滞もなく順調に河口湖インターまで来ることができた。
香奈さんは左手に見える富士急ハイランドを見て目を輝かせていた。
「ね、ねぇ、イツキ、あれ富士急ハイランド?行きたぁ~い」
「今日は行きませんよ。また、いつか来ましょうね」
ボクは子供を諭すように彼女に言った。
「それに、香奈さん高所恐怖症じゃないですか?ジェットコースターも観覧車もダメなんじゃないんスカ?」
「い、イツキと一緒なら、だ、大丈夫だと思う」
香奈さんは赤くなって小声で言った。
そして続けて、
「それに、スゴくコワいお化け屋敷あるでしょ?あれに入りたくてしかたないのよ!」
と、今度は興奮気味に言った。
「えっ、お化け屋敷?ボクはパス、絶対パス」
「なに、イツキ怖いの?情けない」
「しょうがないじゃないですか。こう見えても繊細なんだから」
「繊細?臆病の間違いじゃなくて?」
「あぁ~、かわいくねぇなぁ~」
「ほう、そのかわいくない女に惚れたのは、どこの誰だい?」
「くっ、ボ、ボクです、で、でも、そんな香奈さん、大好きです」
ボクは不意に言って、つい赤くなってしまった。
「も、もう、突然なに言うのよ。バカ」
彼女も照れくさそうに言った。
ボクはあまりに照れくさくなり、またタバコに火をつけていた。
そして思った。
いつまでも、こんな時が続けばいいなと。
とても居心地のいいこの雰囲気、これを守るためならボクは、なんだってできるような気がした。