明日の君と
香奈さんのお手製サンドウィッチを平らげたあと、ボクらは湖畔の道を車で走った。
競艇の訓練所付近まで来ると、周辺一面は紅葉で色づいていた。
香奈さんはしきりにその景色を見ては嬉しそうに目を細めていた。
また、湖に目をやると、水の中に腰まで浸かりフライフィッシングを楽しんでる釣り人の姿も見えた。
そろそろトラウトの楽しいシーズンに突入したようだ。
「これからどうします?他の湖に行くのもいいし、静岡の方に行ってもいいし、甲府に抜けて勝沼あたりでワイン買うなんてコースもありますけど」
次の目的地を決めかねていたボクは香奈さんにお伺いをたててみた。
「なんだ、決めてなかったの?」
「うん、アレコレ考えてたら余計に決めかねちゃって、香奈さんの意見に従おっかな、なんて思って」
「う~ん、どれがいいかなぁ。イツキはどうしたいの?」
「それが決められないから香奈さんに聞いてるんすよ。まぁ、香奈さんと一緒ならドコでも嬉しいっすけど」
ちょっと照れくさかったけどそう言った。
正直、偽り無い本心だったから。
「バ、バカ、またそんなこと、臆面もなく」
内心、素直じゃねぇなぁ、と思いつつ彼女の言葉を聞いていた。
「よし、イツキ、全部の湖行ってみよう。私、河口湖しか行ったことないから、全部見てみたい」
彼女はそう言ってボクを見上げた。
「じゃ、次は精進湖ですね。で西湖、河口湖、山中湖の順に行きますか」
ボクらは次の目的地、精進湖に向かい車を進めた。
精進湖に着くと香奈さんはその湖の小ささに驚いていた。
周辺はほとんど溶岩帯で水も本栖湖より透明度は低かった。
「なんかちっちゃいね。あのたくさん浮いてるボートなに?」
「富士五湖のなかで一番小さい湖なんですよ。ボートはねヘラブナ釣りしてる人達ですよ。この湖は有名なんですって」
ボクらは湖畔に降りてボート屋の主人に写真を撮ってもらった。
「よし、じゃあ次は西湖ね」
彼女はデジカメの写真を大切そうに見ながら言った。