明日の君と
精進湖を後にしてしばらく車を走らせると次の西湖が見えてきた。
ボクはこの辺りで以前話題になった幽霊話を香奈さんに聞かせた。
タクシーに女の人を乗せたらシートが濡れていて客は消えていたっていう有名な話や、首なしライダーの話、また、河口湖につながるトンネルで何かを連れてきちゃう的な話など、よくテレビなどで再現ドラマとか作られるアレだ。
さすがお化け屋敷好きの香奈さんだけあって、目を輝かせながらボクの話を聞いていた。
「ねぇねぇ、イツキ、じゃあ今度、夜にこの辺来てみようよ」
彼女は楽しそうに言った。
「ダメですよ。遊び半分で心霊スポット巡りなんてしちゃ、取り憑かれますよ。それにこの辺に住んでる人達にも迷惑になるから」
ボクは諭すように言った。
「なんだ、イツキの弱虫」
「べ、別に霊とか信じてるわけじゃないけど不謹慎じゃないですか、そういうの。あっ、この辺で降りましょうか」
そう言って湖畔の駐車場に車を停めた。
湖は青く初冬の柔らかい日差しに煌めいていた。
「この西湖とさっきの精進湖と本栖湖って地下でつながってるんですよ。だから水位は一緒なんだって。昔は一つの大きな湖だったんですよ。富士山の噴火で3つに分断されちゃったんだってさ」
ボクは子供の頃、学校で習ったことをそのまま香奈さんに話した。
「イツキ、物知りだね。意外だよ」
彼女は笑いながら言った。
「意外はないでしょ。意外は」
ボクも笑いながら答えた。
ここでもふたりのツーショット写真をデジカメにおさめて次の目的地河口湖に向かった。
先ほど話題にしたトンネルをくぐり抜けるとすぐに奥河口と呼ばれる辺りに出た。
「河口湖はヒトが多いですよ。お土産屋とかあるけど寄ります?」
ボクは香奈さんに尋ねた。
「う~ん、また2人で写真撮れればいいや、ここは来たことあるし、お土産は山中湖でもいいよ」
彼女は湖を見ながら言った。
湖上には遊覧船やレジャーボートがところ狭しと浮いていた。
今までの湖とは違いちょっと人が多かった。
ボクらは河口湖大橋の近くに車を停め、思い出写真をまた1枚写した。